プーチン、教育・医療費削って国防・治安予算を増額へ 「愛国教育」は513%増
2023年の予算では、道路や農業、研究開発など「国家経済」関連の支出は23%減の3兆5000億ルーブルになる見通し。医療関連は9%減の1兆5000億ルーブル、教育関連は2%減の1兆4000億ルーブルだ。
ロシア大統領アカデミー(Ranepa)とガイダル研究所の共同調査によれば、インフラと産業への支出はそれぞれ23.5%、18.5%減少する。両研究所は、政府が西側諸国以外の新たな市場の開拓を試みている中で、この予算減は「重大な困難を引き起こす可能性がある」と指摘している。
研究開発への投資も削減されると見通しで、制裁で最新のテクノロジーが国内に入ってこない中、「多くの基幹産業では、国産のテクノロジーを開発するための資金が得られなくなる」とRenepaは見ている。
2018年に4期目を目指して大統領選挙に出馬したプーチン大統領は、2024年までにロシアを世界第5位の経済大国にするという目標を掲げ、道路から医療、教育に至るまで、合計13の「国家プロジェクト」に4000億ドル(約55兆6000億円)以上を投じると公約した。
こうした目標の達成はコロナ禍のもとで2030年に先送りされたが、来年度は関連の予算が10%削減されるため、アナリストらは、またもや目標を達成できなくなるリスクが高まっていると指摘する。
年金や福祉といった社会保障関連費は、プーチン大統領の国内経済政策の要であり、前回の大統領選挙でも有権者へのアピールに利用された。来年度は合計7兆3000億ルーブル、前年比では8%増だが、それでも軍事・治安関連予算の合計には及ばない。
Ranepaとガイダル研究所によれば、教育に関する国家プログラムへの拠出は削減されるが、進行中の事態や歴史的な出来事へのロシアの見解を反映するため、学校での「愛国教育」に関する予算は今年度に比べ513%増えるという。
ロシア国立研究大学経済高等学院は、医療費削減について「コロナ禍と医療サービスへのアクセス悪化という2つの要因による死亡率上昇に鑑みれば、正当化できない」と指摘している。
忍び寄る債務の影
経済制裁が歳入を圧迫する中で、ロシアは来年度の財政赤字がGDP比2%に相当する3兆ルーブルへと倍増すると予測しているが、アナリストらは、4兆5000億ルーブルに達する可能性もあると述べている。
財政赤字を補填するため、財務省はすでに政府系ファンド「ナショナル・ウェルス・ファンド」に手をつけており、さらに前週、ルーブル建て国債(OFZ)を発行して140億ドルを借り入れた。
これは1日の国債発行額としては過去最大であり、英国防省はツィッターで、ロシアが国防支出を賄うために借り入れを行っている兆候だと強調した。
ロシアの公的債務は来年GDP比17%になると見られており、国際標準に比べれば低い。だがアナリストらによれば、債務償還コストが支出全体に占める比率は、現在の5.1%から2025年には6.8%に膨らみ、医療と教育に向けた支出を上回る見込みだ。
ロシア金融大学は「2023年から2025年にかけて、公的債務は国の経済成長率を上回るペースで増加するだろう。これは借入資金の使用効率の低下を示しており」、経済成長に打撃を与えるだろうとしている。
(Darya Korsunskaya記者、翻訳:エァクレーレン)
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