最新記事

犯罪捜査

父親は「連続殺人鬼」 誰も耳を貸さなかった子供の訴え...その驚愕の真相に迫る

FIELD OF NIGHTMARES?

2022年11月26日(土)19時32分
エリク・ファーケンホフ、ナビード・ジャマリ(いずれも本誌記者)

221129p40_RSA_04.jpg

2013年に死去したドナルド COURTESY OF LUCY STUDEY

ステュディーは高校時代にスクールカウンセラーから、これからの人生で何をするつもりかと聞かれたことを覚えている。生きて大人になれるなどと考えたこともなかった彼女は、思わず笑い出してしまったという。当時の彼女はできるだけ家にいないで済むように、近くのコンビニエンスストアで長時間アルバイトをしていた。最終的に、軍に入ることで家を出られたが、軍務は好きではなかったと言う。

ドナルドがステュディーに対して怒りを爆発させたことがある。1万6000ドルを超える彼の金を盗んだというのがその理由だ。盗難は事実で、フリーモント郡保安官事務所が出動したが、立件されることはなかった。「お金を取ったのは私。何もかも全部正直に話してきたから、この件についても嘘はつかない。あれが私の知る唯一の父を傷つける方法だった。当時住んでいたミネソタ州に戻ると、お金は全部寄付した」

今、父親のことをどう思っているかと尋ねると、ステュディーはこう答えた。「父に対しては何も感じない。全く何も感じない。父が生きている間は法の裁きを求めたけれど、死んでしまったし」

アイストロープによれば、ステュディーはあくまでも目撃者として扱われており、いかなる犯罪の容疑者にもなっていない。

捜査が動き出したのは昨年の初め

フリーモント郡保安官事務所には、10年ほど前にもステュディーから電話があったと、アイストロープは言う。保安官代理の1人が井戸を探しに行ったが、当時は見つけられなかった。捜査が動き出したきっかけは、昨年の初めにステュディーがかけてきた電話をマイク・ウェイク保安官代理が受けたことだった。

ウェイクは近くのアイオワ州テイバー周辺の出身で、地元の警察署長を務めた人物だ。テイバーではドナルドに関するよからぬ噂がいろいろと流れていたという。ドナルドは背が低くて、しょっちゅう酔っぱらっていて、しばしばケンカを起こす妙な男だった。

「昔から噂はよく聞いていたから、電話があった後、現場に行って見てみたんだ。(井戸が)あると思われる場所について彼女は話してくれたんだが、まさにその場所に井戸があった。本当に寸分たがわぬ場所に、だ。冗談抜きで。それに、彼女の話は全くぶれなかった」

ステュディー本人が井戸の場所を探し当てられるか確かめるために、ウェイクらは米南部に暮らす彼女を呼び寄せた。一家が住んでいた場所は、木の伐採やブルドーザーによる地ならしで景観が大きく変わっていたが、「彼女は迷わず歩いて行き、『この辺りのはず』と言った。そこを調べてみると(井戸が)あった」と、ウェイクは語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中