最新記事

米政治

「赤い州」テキサス州に異変あり!? 激化する社会の分断と米中間選挙

A DIVIDED RED STATE

2022年11月9日(水)10時45分
前田 耕(ノーステキサス大学政治学部准教授)

グレッグ・アボット州知事は、将来の大統領選出馬も取り沙汰されているのだが、これらの政策を打ち出すことで、自分の保守派イメージを固めようとしているようだ。

2015 年、彼はツイッターに、「恥ずかしいことに、銃の購入数でテキサスはカリフォルニアに負けて全国2位だ。もっとペースを上げよう」と書き込んだことがある。もちろん、今年5月にテキサス州南部の小学校で21人が射殺される事件が起きた後も、決して銃規制を強化しようとしない。

テキサスに限らず、アメリカでは党内の予備選で候補が選ばれるため、政治家は自分の党内の支持をまず固めないといけない。予備選は非常に投票率が低く、10%を割ることもある。

そのような低投票率の選挙で投票するのは、共和党なら熱心な保守、民主党なら熱心なリベラルの人々であり、だから候補たちはそういう層にアピールできる政策を打ち出す必要に迫られるのだ。

「社会の分断」という言葉が使われるようになって久しいが、共和党支持者と民主党支持者の間の対立は近年激しさを増してきている。その対立は、経済運営や外交のような政策課題についての意見の相違よりも、信仰や愛国心などの個人的な信条に根差した感情的なものであることが多い。

そうなると、話し合いによって分かり合えるようなものではなく、反対側の人を「人間として許せない」と見るような抜き差しならない対立や憎悪にも発展する。

アメリカ人の政治意識を説明するために「否定的党派性」(negative partisanship)という概念が最近よく使われる。それは、「A党の政策を支持するからA党に投票」ではなく、「B党とその支持者のことが嫌いだからA党に投票」という種の政党支持である。

共和党支持者と民主党支持者の間の深刻な対立はそこまで深まっている。妊娠中絶や銃規制などの問題においても、賛成派と反対派の間で妥協点を探ろうとする試みや、対話によって相手側の人を説得しようとする努力はまず見られず、お互いを、理解し合う余地のない敵だと見るような風潮が社会を覆っている感がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中