G20首脳会合、注目は全体会議より米中などの個別会談 プーチンは出席見送りか
インドネシアのウルトラCは瓦解
ジョコ・ウィドド大統領は11月2日にプーチン大統領と電話会談したが、プーチン大統領はG20参加の意向は明確にしなかったという。
このため現時点ではプーチン大統領の参加はかなり難しいとの見方が有力となっている。
バイデン大統領は、もしプーチン大統領が出席した場合は二国間会談どころか立ち話しにも応じることはなく、各国首脳による集団での記念写真撮影でも一緒になることはない、との強硬な姿勢を示している。
もしプーチン大統領が参加した場合、ウクライナへの軍事侵攻をめぐり中国やインドなどを除く各国から非難されることは必至であり、参加のメリットは少ないと判断しているとみられる。
ジョコ・ウィドド大統領は6月末からウクライナとロシアを訪問してゼレンスキー大統領、プーチン大統領の双方にG20への参加を要請した。
ジョコ・ウィドド大統領としては、あわよくばG20首脳会合で戦争当事者である両国首脳の初顔合わせという「ウルトラC」で和平に向けた直接会談を密かに狙っていた。
だが、外務当局などからは「実現はほぼ不可能」との観測が寄せられ、せめてプーチン大統領のG20出席とゼレンスキー大統領のオンライン参加という「帳尻合わせ」で国際社会に成果をアピールという考えに後退したとされている。
ただ現状ではプーチン大統領は不参加の見通しに加えて、ゼレンスキー大統領のオンライン参加でメンバー国のコンセンサスが得られるかどうかは不確定な状況となっている。
バリ島が単なる場所貸しになる可能性も
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領、外務省はG20首脳会合で「コロナウイルスなどの感染症対策」「持続可能な環境対策」「ドル高による世界経済への影響」「ロシアのウクライナ軍事侵攻にともなう世界的食料危機問題」「北朝鮮のミサイル、核問題」「ロシアの軍事侵攻などの安全保障問題」など幅広い課題を討議することで首脳会合の成功を内外にアピールすることに苦心している。
バリ島では環境保護の観点から参加首脳のマングローブ地帯訪問や各国首脳や参加関係者に日中韓などの自動車会社から提供された電気自動車による移動を奨励することを計画している。
ただ米中首脳会談が実現したり、日米韓などによる個別会談の開催も見込まれるなど、個別会談の話題にG20首脳会合自体が埋没し、報道での比重が下がることを議長国インドネシアとしては非常に懸念している。
バリ島のG20首脳会議が国際政治の単なる「場所貸し」になってしまうことをインドネシア政府は警戒しており、交通などの数々の制約にも関わらずG20開催期間中も含めて世界各地からの観光客の誘致に力を入れている。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など