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「ベルトでお尻を叩かれた」「大学進学は罪」──宗教2世1131人に聞く宗教的虐待の実態

2022年11月22日(火)11時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

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宗教2世の実態調査を行った「社会調査支援機構チキラボ」代表で筆者の荻上チキ(写真提供:社会調査支援機構チキラボ)

「親子問題」では済まされない

まず、「2世問題」の前提を確認しておくと、いわゆる「宗教2世問題」や「カルト2世問題」とされるものは、これまで問題視されてきた「親子問題(親ガチャ問題や毒親問題とされるもの)」とは、少し異なる性質を持っている。

2世問題の場合、家族の外側に信者集団があり、さらには教団、教祖、経典などがある。たまたま、特定の親が変わった要求をしてくるというのではなく、教団や信者集団が、特定の世界観や信念を、意図的・継続的・集団的に、子ども=2世以降に伝達しようとするのである。

多くの2世(ラボ調査では9割以上の2世)が、幼い頃から、「家の宗教」を信仰することを求められる。それは大抵の場合、特定の信者ネットワークの中で育つということを意味する。そのため、親の教育方針に疑念を抱いても、「他の子は熱心に活動しているよ」「お母さんのいうことを聞かないと地獄に落ちるよ」といった仕方で、他の信者から諭されたりすることが起こり得る。

親子の外側に信者集団があり、そこにはそれぞれの「信者風土」がある。この「集団性」というのが、2世問題を根深くする一つの要因であると言える。「集団性」があるため、2世は脱会を検討する際、生まれ育ったコミュニティを裏切るような感覚を味わい、葛藤や自罰感を覚える人が少なくない。

この「集団性」や「信者風土」がややこしいのは、「教義」や「教団の方針」「開祖は会長らの思想」とは別に、独自の動きを示すことがあるということだ。例えば、教義としても、教団の方針としても、男女の区別を全面に押し出していない宗教の場合でさえ、「集会の時には、女性は長いスカートを履いてくることが望ましい」といった具合に、独自ルールを「信者風土」として共有することがある。

だからこそ宗教2世の問題を考える場合、ただ「教義」「教団」の問題に着目するだけでは不十分な点が出てくる。また、教団などが外から問題を指摘された際、「一部の信者がそのようなこと解釈を行なったにすぎない」といった仕方で、「信者風土」のせいにして責任追求を逃れるようなことも起きている。

幅広く2世被害について対応するのであれば、「教団」だけを対象にするのではなく、「集団性」「信者風土」に着目した対応も必要となるだろう。具体的には、集団的な虐待推奨行為の規制、集団的な過剰献金の推奨行為に注目し、さらには教団による監督不行き届きや是正義務についても論じる必要がある。

一般的な法人でも、社内でパワハラなどの各種ハラスメントが横行していたり、社員の不正会計などが問題視されれば、法人として調査し、時には第三者委員会を設けるなどして、再発防止策を模索する。そうした対応は、宗教法人であっても、同様に行われる必要があるだろう。

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