「ベルトでお尻を叩かれた」「大学進学は罪」──宗教2世1131人に聞く宗教的虐待の実態
「集団的な虐待推奨行為」の規制を
そこでまずこの記事で特に投げかけたいのは、「集団的な虐待推奨行為」への対処である。
宗教実践の中には、あきらかに子どもに有害なものも含まれる。調査の中で目立ったのは、「エホバの証人」の2世回答者の、身体的虐待(体罰)経験率だった。調査では、エホバ2世回答者の8割以上が、家族等からの身体的虐待を経験していた。
具体的にどのようなものであったのか。ここに自由記述の一部を紹介する。
(※具体的な記述が含まれるので、ストレスやフラッシュバックなどに注意してください)
●小さい子供の頃、集会で大人しく座っていられない等の理由で皮のベルトでお尻を叩かれた。会館と呼ばれる集会所には懲らしめの部屋があり、誰でも使える皮でできた鞭が複数置かれていた。
●木の棒やゴムホースでお尻を直接(何も履かない状態で)叩かれた。しょっちゅう赤いみみず腫れができていた。自分から服を脱いでお尻を出さなければならず、怖いので出せないでいると何時間も母親とにらみ合いの状態が続いた。お尻を出せるまで納戸に閉じ込められることもあった。とにかく痛くて怖くて嫌だった。
●集会や布教に行きたくないと言うとお尻を出して電気コードで何十回も叩かれました。皮膚がさけました。悲しくて辛くて苦しくて怖かったけど私が悪いからだと言いました。親は宗教活動をしないと本当に世界の終わりに滅ぼされると教団の教えを信じていたので、これも親の愛なんだと思うようにしむけられていました。お祭りや友達の誕生日パーティーも行きたいと言うと鞭で叩かれます。祭り事や楽しいことは全て禁止で破ったら鞭です。
2世や脱会者へのインタビューを聞くと、信者たちはしばしば、「鞭」に代わるものの情報交換などを行なっていたようだ。そして子どもへの「鞭」を行なった親に対し、ねぎらいや励ましの言葉を掛け合うという。
毎日新聞の取材に対し、エホバの証人の広報担当者は、「方法は各家庭で決めることだが、体罰をしていた親がいたとすれば残念なことだ。教えを強制することもしていない」と回答したという。このような回答に対し、エホバの元2世たちによるウェブコミュニティでは、憤りの声が多くあがっていた。
虐待を推奨する行為は、エホバの証人だけではない。例えば調査には、次のような体験談も寄せられた。
●意に反して裸足で焚き火の上を渡らされたり、早朝に起こされ冷水を浴びせられたりした。
●「参加しないのは不信心だ、家がダメになる」と言って、火渡りや登山、滝行、神社への参拝などに行事に連れて行かれた。
集団としてなされていた行為に対し、教団が「信者の暴走論」で済ませようとする動きは、これからも行われるだろう。こうした実態を考えると、「集団的な虐待推奨行為」に対する規制や、法人格としての安全配慮義務を実行させることなどが必要であると考えられる。
また、他の犯罪であれば、教唆(そそのかすこと)や幇助(手助けすること)が罰せられることがある。筆者は、虐待についても、教唆や幇助について対応する必要があるのではないかと考える。
これまで虐待は、家庭で独自に行われるものが想定されて議論されてきた。実際「児童虐待防止法」でも、「児童虐待とは、保護者がその監護する児童についておこなう行為」とされている。ここでは、親同士の教唆や幇助、そしてその集団への指導などは想定されてこなかった。
宗教2世への幅広い身体的虐待が明らかになった今、「集団的な虐待推奨行為」についても、議論をすることが必要だと考える。