ASEAN、ミャンマー問題めぐり立場の違い浮き彫りに 首脳会議へ民主派勢力の参加求める声も
ミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官 REUTERS
<非人道的な動きを強める軍政への対応めぐり岐路に立つ周辺国>
東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議が10月27日、インドネシアのジャカルタで開催された。主要議題は混迷の度を深めるミャンマー問題だが、加盟国間の意見の相違が改めて浮き彫りとなり、目立った成果の得られない会議となった。ミャンマーで軍事政権に抵抗を続ける民主化勢力のみならず、ASEAN加盟国からも落胆の声が出ている。
今回の外相会議はASEAN加盟10カ国中7カ国の外相が参加して行われた。問題の当事者でもあるミャンマーは、会議に招待されていないため欠席。11月に総選挙を控えて多忙なマレーシアと政府首脳の中国訪問を翌週に控えたベトナムの外相がそれぞれ欠席した。
このうちマレーシアのサイフディン・アブドラ外相の欠席が、協議が不調に終わった一因と指摘されている。
というのもサイフディン外相は、ASEAN加盟国の中でもシンガポールと並んでミャンマー軍事政権にもっとも強硬な姿勢を取り続けており、ASEANの一連の会議から軍政代表を締め出し、代わりに抵抗を続ける民主化組織の代表を招待してミャンマー問題を協議すべきだ主張していたからだ。
「5項目の合意」とは
外相会議では、2021年2月1日にミン・アウン・フライン司令官率いる国軍によるクーデター発生を受けて同年4月24日に開催されたASEAN緊急首脳会議で採択された議長声明としての「5項目の合意」を基本線として議論が行われた。
この「5項目の合意」はその後のASEANによるミャンマー問題の仲介・調停の原則となり、何度もミャンマー軍政にその履行を迫って来た経緯がある。
「5項目の合意」は①武力行使の即時停止、②関係者全員の建設的な話し合い、③ASEAN特使の派遣、④人道的支援の受け入れ、⑤ASEAN特使と関係者全員の面会、となっている。
軍政はこの5項目のうち「ASEAN特使の受け入れ」「人道支援の受け入れ」に関しては履行しているものの、「武力行使の即時停止」は「反軍を唱える民主勢力や少数民族武装勢力が武力行使を続けている」、「関係者全員との面会」に関しては逮捕・公判中のアウン・サン・スー・チー氏を念頭に「裁判中の被告との面会を許可する国などない」などと主張。履行を断固として拒否し続けているのが現状だ。