最新記事

ウクライナ戦争

「現在の戦略エスカレーションは悪あがき、プーチンはもはや戦局をコントロールできていない」──元ロシア連邦議員

'Paranoid' Putin Has Lost Control of His Future—Prominent Russian Lawyer

2022年10月20日(木)18時18分
デービッド・ブレナン

プーチンは失敗にどう対処していいかわからない Sputnik/Ramil Sitdikov/REUTERS

<自らが仕掛けた戦争で泥沼の窮地に陥ったプーチン。ウクライナでの敗北は、たとえ部分的な敗北でも政治的・個人的な死を意味する>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ戦争の破滅的な展開に「コントロールを失っている」と、ロシアの元連邦議員が本誌に語った。

プーチンは政権掌握後初めて出口の見えない軍事的泥沼に陥っていると、ロシアの元下院議員のマルク・フェイギンは指摘する。「プーチンが自分の将来を自分で決められない事態に直面したのは、これが初めてだ」

フェイギンは現在、国外に拠点を移し、人権派弁護士として反体制派の女性パンクバンド・プッシー・ライオットや2021年にウクライナの首都キーウ(キエフ)でロシア軍の特殊部隊に拉致されたロシアの反体制組織のメンバー、Leonid Razvozzhayevら、著名な反プーチン派を支援している。

プッシー・ライオットの創設メンバーで2年間投獄されたナジェージダ・トロコンニコワ

手詰まり感が強まるなか、プーチンはますます孤立し、ますます不安におののいていると、フェイギンは言う。

「プーチンはもう70代で、精神状態はかんばしくない。病的な猜疑心から、ごく近しい取り巻きでさえ、自分が苦境に陥ったことをひそかに喜んでいるのではないかと疑っている」

長丁場の苦戦は初めて

フェイギンによれば、プーチンの周りは「敵だらけ」だ。「しかも状況が良くなる気配はない。迫り来る政治的な死がプーチンをおびやかしている」

フェイギンの見解について、本誌はロシア外務省にコメントを求め、回答を待っている。

チェチェン、ジョージア、シリア、さらに2014年のクリミア併合と、プーチンはこれまで自らが仕掛けた軍事介入では常に短期間で戦果を挙げ、国民の熱狂的な支持をつかんできた。8カ月もの長丁場に手こずり、崖っぷちに追い込まれたのはこれが初めてだ。

「プーチンがこれからどんな手を使うにせよ、結果が読めないままイチかバチかの賭けに出ているのは明らかだ。プーチンはもはや戦局を全くコントロールできてない」

フェイギンはロシア軍の侵攻開始後、ウクライナの大統領顧問を務めるオレクシイ・アレストビッチと毎日YouTubeでオンライン対談を行い、現地の状況を世界に発信してきた。侵攻当初、プーチンは短期間に決着がつくと踏んでいたと、彼は言う。

「2日か3日で片付くと本気で思っていた。電撃戦で方をつけるつもりだったのだ。将官たちの言葉を信じて、楽勝だとタカをくくっていた」

フェイギン(左)とアレストビッチ
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中