「ウクライナは情報操作のため『戦争被害者を演じる役者』を使った」説は本当か
Fact Check: Russia Claims Injured Ukrainian Mom in Photo Is Crisis Actor
@stillgray/Twitter
<ウクライナを巡る別々のニュースに同一人物がいるのは「役者」を使った情報操作だとロシアは陰謀論を唱えるが、事実はどうなのかを検証する>
ウクライナ東部の4州をロシア連邦の一部にすべきかを決める住民投票が強行され、国際社会からロシアへの非難が続くなかで、あるロシア当局者がツイッターで「反撃」を行った。住民投票に関する疑惑を含む「ロシア批判」を盛り上げるため、親ウクライナのプロパガンダ拡散者が、戦争被害者を装った「俳優」を使ったと主張したのだ。
■【写真】なぜ別々のニュースに同一人物が...「プロ被害者」との主張の根拠とされる比較画像
ロシアの国連次席大使ドミトリー・ポリャンスキーが投稿したツイートは、包帯を巻いた女性の写真2枚が並んだツイートをリツイートしたものだ。1枚目の写真は、2月25日にロシアに侵攻されたウクライナからの報道で使われていたものだ。
2枚目の写真は、9月にウクライナ東部で行われた住民投票に関する動画のサムネイル画像として使われたもので、そこに写っている女性は同一人物のように見える。
ポリャンスキーはこれらの写真について、「彼女はプロの被害者のようだ。アカデミー賞の特別賞を新設した方がいいかもしれない」と、ツイートした。ポリャンスキーがリツイートしたもともとのツイートは、評論家のイアン・マイルズ・チョンが投稿したもので、「この女性は、あと何回負傷するのだろう?」と書かれている。
この主張は、クライシスアクターという概念に関連する。クライシスアクターとは、文化や政治の世界の周縁で広まっている陰謀論のひとつであり、メディアに登場する危機の被害者を「国家や秘密の権力に利用された俳優だ」として非難する。
こうした誤解を招く無神経な戦術は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックやアメリカの銃乱射事件などでも、不正確な情報を広めるために使われてきた。そして今回のウクライナ戦争でも、この戦術が巧みに使われているのだ。
写真の女性は実際にロシアの攻撃で負傷した人物
ポリャンスキーのツイートで並べられている2つの画像を比較すると、同じ女性が数カ月の間を開けて、同じ場所を負傷した状態で撮影されたことを示しているように見える。紛争が始まった直後と、ウクライナ東部で住民投票が行われている最中だ。
では彼女は「ロシア批判」を盛り上げるために雇われた役者なのか。答えはノーだ。ただし、2枚の写真の女性が同一人物なのは本当。ウクライナ出身の53歳の教師オレナ・クリロという人物だ。
クリロは2月24日、ロシアがハルキウ州チュグエフを標的にミサイル攻撃を行った後で、外国メディアの取材を受け、写真を撮影された。1枚目の印象的な写真は当時、そしてその後、ウクライナ侵攻に関する初期の報道で広く使われた。