OPECプラスの大幅減産でEUの対ロ制裁にヒビ?
OPEC Decision Could Force Europe to Cooperate With Putin
エネルギー価格の高騰対策として、EUからより手厚い支援を引き出すために対ロ制裁の緩和をちらつかせる加盟国もあるだろうと、専門家は指摘する。EUが値上がり分を補填する補助金を出してくれるなら制裁を続けるが、補助金なしにはこれ以上耐えられないと脅しをかけるというのだ。
ドイツは燃料価格の高騰による消費者の負担を軽減するため補助金を出しているが、全てのEU加盟国がそうした措置を取れるわけではないと、ニューハンプシャー大学で政治学の助教を務めるエリザベス・カーターは言う。財政に余裕がない国々はEUからの補助金頼みだ。
「EUがエネルギー価格の抑制とインフレ抑制のために、コロナ禍対応で実施したような緊急融資の枠組みを設ける可能性もあるが、すぐにまとまるとは思えない」
こうした枠組み作りでは、EUの協議は毎回難航するからだ。とはいえ欧州委員会のウルズラ・フォンデアライアン委員長はエネルギー価格高騰の影響を軽減するためロシアから輸入うする天然ガスに上限価格を設定する考えで、近くEU各国首脳と協議することになっている。ロイターの報道によれば、大半の加盟国は上限設定を支持しているが、ドイツ、デンマーク、オランダは供給不足になる事態を警戒しているという。
危機の早期終結もあり得る
ドイツがロシアのエネルギー資源に大きく依存していること、そしてハンガリーがロシアと親密な関係を保ってきたこと。この2つの要因が、対ロ制裁におけるEUの足並みの乱れを招いてきたと、アメリカン大学のビル・デービーズ准教授は指摘する。OPECプラスの減産でEU内の亀裂がさらに広がる可能性がある。「供給が減れば、加盟国同士の軋轢が一段と高まるだろう」
OPECプラスの主要メンバーであるロシアはサウジアラビアと共に大幅減産に同意した。今回の決定は、ウクライナで苦戦するプーチンの劣勢挽回のための戦略ともみられている。「欧州経済に打撃を与え、EUの結束に揺さぶりをかける狙いがある」と、カーターは言う。
プーチンの思惑どおり、EUに混乱が広がるとの憶測が飛び交う一方、 デービーズはこれを奇貨としてNATOの結束が固まる可能性もあるとみている。そうなれば、短期的にはガソリン価格の高騰で世論の不満が高まるにせよ、長期的に見ればアメリカにとってはプラスになる。
「EU各国がこれまで以上にアメリカの石油備蓄に頼るようになれば、NATOの結束が強化されるだろう」
「さらに楽観的な見方もできる」と、デービーズは言う。「ウクライナの反転攻勢でロシアが追い込まれている現状を見ると、これまで予想されていたほど戦争が長期化せず、危機が早期に終結する可能性もある」