OPECプラスの大幅減産でEUの対ロ制裁にヒビ?
OPEC Decision Could Force Europe to Cooperate With Putin
OPECプラスの閣僚級会合に出席したロシアのノヴァク副首相(10月5日、ウィーンのOPEC本部) Lisa Leutner-REUTERS
<原油価格のさらなる高騰が予想される中、「背に腹は変えられない」と対ロ制裁の緩和に踏み切る国が出てくる可能性も>
OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど主要産油国で構成するOPECプラスは10月5日、11月から日量200万バレルの大幅減産を実施する方針を決定した。これによりエネルギー価格の上昇は避けられず、冬を控えて燃料不足に耐えきれなくなったEUの一部加盟国がロシアのウラジーミル・プーチン大統領の狙いどおり、対ロ制裁の緩和に踏み切りかねない状況となった。
EUは3月末にウクライナへの軍事侵攻に対する追加制裁としてロシア産原油の輸入を禁止する方針を発表したが、一部加盟国の反発で協議は難航し、全面的な禁輸には至らなかった。EUの苦境を見かねた米政府はサウジアラビアに原油増産の継続を働きかけてきたが、その甲斐もなく、OPECプラスは世界的な景気の冷え込みを理由に大規模減産で合意。ロシア産原油の輸入を止めた国々は今後さらに燃料不足と価格高騰に苦しむことになりそうだ。エネルギーをはじめ物価の上昇が続けば、国内の政治的な軋轢が高まり、対ロ制裁の継続は困難になる。
対ロ制裁では「EUは必ずしも一枚岩ではない」と、ボストン大学のイゴール・ルークス教授(専門は歴史と国際関係)は本誌に語った。
ロシア寄りのハンガリー
ルークスによれば、多くのEU加盟国は石油禁輸でロシアの外貨収入は途絶え、戦費が底を突くとみて追加制裁を支持した。それらの国々は燃料価格の上昇に歯を食いしばって耐え制裁を続けるだろう。
一方、同じEU加盟国でもロシアと関係が深い国々はロシア産石油への依存度も高く、元々EUの対ロ制裁に非協力的だった。ウクライナへの軍事侵攻に対する非難にも温度差があり、一部の加盟国の指導者はプーチンを擁護するような姿勢も見せてきた。
「同じ旧ソ連圏でもバルト3国などは反プーチンの姿勢が鮮明だが、ハンガリーなどは元々プーチンの懐に取り込まれている」と、ルークスは言う。
ハンガリーのオルバン・ビクトル首相はロシアのウクライナ侵攻に抗議し、即時停戦を呼びかけもしたが、対ロ制裁には参加していない。ハンガリーはロシア産の石油・天然ガスに大きく依存しており、ABCニュースの報道によれば、EUのロシア産石油の全面禁輸は「わが国の安定的なエネルギー供給を破壊し」、自国経済を壊滅させると主張して、最後まで反対し続けた。