最新記事

台湾有事

中国の台湾侵攻は何ヵ月も前から秘密でなくなる──元CIA分析官

China Won't Have Element of Surprise in Taiwan Invasion—ex-CIA Analyst

2022年10月6日(木)11時29分
ジョン・フェン

「そして中国の指導者たちはおそらく、緊縮財政、何万人もの戦闘員の死、アメリカや台湾の攻撃による民間人の死など、戦争の代償を国民が受け入れるように心理的な準備をさせるだろう」と、カルバーは指摘した。だが、こうした兆候は見られないことから、早ければ2024年に台湾海峡で紛争が起きるという予測は当たりそうもない。

中国は台湾を自国の領土と主張し、大陸との「統一」を愛国的な使命と考え、必要であれば武力でそれを達成するつもりでいる。一方、台湾では、中国との統一を望む声は減る一方だ。

中国が軍事的な手段をとるということは、説得による統一に自信がないことを示唆している。同時に、中国の習近平国家主席も、台湾危機を引き起こすことによる長期的な影響を警戒しているだろう、とカルバーは言う。

「このような戦争は数年あるいは10年近く続く可能性がある。中国はアメリカや、場合によっては多くの国による制裁を受けるだろう。アメリカは経済封鎖も辞さないかもしれない」と彼は書いている。

だがカルバーは、全面戦争以外の中国が取りうる選択肢を単純化しすぎるのも危険だと警告した。

戦いは国家的事業に

「選択肢が少なければ、台湾の降伏を強制することはできないだろう。だが台湾を経済的、政治的にさらに孤立させて台湾政府への圧力を強め、中国に有利な状態で政治交渉に入るよう仕向けることはできるだろう」と、彼は言う。

「中国が台湾に戦争を仕掛けるとすれば、その規模の大きさゆえに戦略的なサプライズをもたらすことはできない。仮に習近平は台湾が戦意を喪失することを期待して短期決戦をねらっていたとしても、ロシアの悲惨なウクライナ侵攻を見て、より慎重になったはずだ」と、カルバーは付け加えた。

「中国の台湾への侵攻は、開始する何カ月も前から秘密ではなくなる。戦いは何年も続く可能性があり、政権が全力で取り組む国家的事業となるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ナスダック最高値、エヌビディア決算控

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、FRB当局者は利下げに慎

ワールド

米、ウクライナ軍事訓練員派遣の予定ない=軍制服組ト

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中