習近平の統治下で「中国は弱体化した」、なぜ続投が可能なのか
XI IS WHAT YOU SEE
習は、総書記に就任した当時は平凡な実績しかなく、権力基盤もほとんどなかった。対立していた江派と共青団派の妥協案として選ばれたのだ。
既に、最もおいしいポストは全て押さえられていた。国有企業も民間企業もことごとく、どちらかの派閥と共生関係にあった。
そこで習は、自分の派閥を築いて忠誠心を高めるために、江・共青団派の財布である民間企業から搾取して、自分がコントロールしやすい国有企業に回した。江・共青団時代に任命された国有企業のトップは反腐敗運動で速やかに粛清され、後任に習の配下が置かれた。
ただし、李克強が各省庁を通じて支配している民間部門を締め付けることは、はるかに難しかった。習の意思で首相を任命することができれば、もっと簡単になるはずだ。
実は、習が国有企業を優遇する理由は、彼が毛沢東派だと主張するまでもなく説明がつく。
習は中堅時代に新聞の連載コラムの中で江の「改革」路線を踏襲し、民間資本はもとより「利益のための芸術」まで支持している。その時々の自分の目的にかなうイデオロギーなら何でも平気で選べるのだ。
習は勝てるのか。この10年の業績は惨憺たるものだが、勝算は大いにある。
習は全体主義の党を掌握し、党内での立場を強化してきた。2018年には国務院との共同管理下にあった武装警察部隊を中央軍事委員会の直属に。ゼロコロナ政策などが軍事クーデターといった権力闘争に勝つための非合法な企ての引き金になる可能性はあるが、標的はむしろ彼の政敵になりそうだ。
人格形成期に過酷な体験も
習は党内でも特に有能で強権的であることを証明してきた。2018年には国家主席の任期制限撤廃の憲法改正案を発表から15日でスピード採択。国の内外を問わず他人が確立したルールを好まない。習のこうした因習打破的な側面は吟味に値する。
中国の攻撃的な「戦狼外交」は世界に衝撃を与えたが、習がその元祖で筆頭格である点は見落とされがちだ。
習は副主席時代の2009年のメキシコ訪問中、人権問題で中国に批判的な国々を非難した。彼の露骨で過激な物言いは物議を醸し、すぐに官製メディアから削除された。
最近は演説での表現がどぎつく暴力的になっている。昨年7月1日の党創立100周年式典では、中国をいじめる国は「鋼鉄の長城に頭を打ち付けて血を流すことになる」と警告。そんな慎みのかけらもない物言いを習は一体どこで覚えたのか。