最新記事

中国

習近平の統治下で「中国は弱体化した」、なぜ続投が可能なのか

XI IS WHAT YOU SEE

2022年10月22日(土)14時25分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

221025p18_SKP_03.jpg

新型コロナウイルス関連の研究施設を訪問(2020年3月) XINHUA/AFLO

「立言」の面ではどうか。第19回共産党大会で打ち出した「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」では、党の指導力の重要性と民族主義を強調したが、それ以外は極めて陳腐な内容にとどまっている。

国に勢いがあるときはそうしたポピュリズム的な主張が共感を得られるのかもしれないが、現在の状況下では空疎に聞こえる。思想を遺すという点では、故・毛沢東に遠く及ばないのが現実だ。

しかし、この3つの基準における成績がお粗末だからといって、習が最高権力者の地位にとどまり続ける道が閉ざされたわけではない。

中国で指導者を評価する際のもう1つの基準によれば、習は大きな成果を上げているように見える。

習は、ウイグル人の「テロリスト」たちを収容所に送り込み、内モンゴルの学校では中国語の教育を強制し、香港を厳しく締め付け、台湾や尖閣諸島に関して強硬姿勢を取り、南シナ海でも多くの人工島を建設した。このような行動は中国の国内では高い評価を受けた。

こうした強硬路線は、特に多数派民族である漢族が理想と見なす「文治・武功」――国内では社会秩序の安定を重視し、対外的には軍事的征服に乗り出す――の考え方に沿っている。

その点では、習は中国史上の歴代皇帝たちも凌駕する。このことは、習が権力闘争を勝ち抜く上で大きな意味を持つだろう。

では、その権力闘争はどのように展開するのか。それを理解するには、なぜ習が3期目を目指すのかを知る必要がある。

党総書記として習の続投は、既定路線とみられてきた。党大会では、指導部の人事案がそのまま追認されるのが通例だ。

核心は国家主席のポストをめぐる争いだ。なぜ習は権力闘争に明け暮れ、憲法を改正してまで、このポストを維持しようとするのか。

反対派にしても、習の3期目就任がなぜそれほど重要な問題なのか。そもそも反対しているのは誰なのか。

国家主席には、行政の実権を握る国務院総理(首相)の任命権がある。ただし、国家主席の権限は、憲法の規定により全人代の決定に基づいて行使されるため、儀礼的な側面が強い。

習体制では中国共産党史上初めて、首相が総書記と対立する派閥に所属している。現首相の李克強(リー・コーチアン)は習とたびたび衝突してきた。

習が今回の党大会で大勝利を収めれば、来春の全人代で国家主席の権限に関する憲法の規約を緩和しつつ3期目続投を果たし、自分の意思で首相を任命するだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中