習近平の統治下で「中国は弱体化した」、なぜ続投が可能なのか
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習の下で中国の地盤沈下が大きく進んだ(2017年の第19回共産党大会) THOMAS PETER-REUTERS
<経済減速と人権弾圧で、中国の地盤沈下が大きく進んだ。過大評価されてきたこの男は、いかに権力闘争を勝ち抜き、何のために3期目続投を狙ったのか。誰が反対しているのか>
今年は習近平(シー・チンピン)にとって、10年前に中国の最高指導者の座に就いて以来最悪の1年と言っていい。しかも、タイミングも悪い。
習が10月16日開幕の第20回共産党大会で党総書記として、そして来春の全国人民代表大会(全人代)で国家主席として3期目の続投に向けて動いてきたことは明白だった。実際、2018年には既に憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃している。
厳しいゼロコロナ政策に基づくロックダウン(都市封鎖)が経済に大きなダメージを及ぼし、上海市の経済は第2四半期に13.7%のマイナス成長を記録した。ウクライナ戦争ではロシア寄りの姿勢を打ち出したが、軌道修正を余儀なくされた。
中国は面目を失い、習の判断力に疑問を持つ人も増え始めている。
しかし、習はもともと過大評価されてきた。習がトップに就いたとき、中国は歴史的に見ても有数の絶好調な時期だったのだ。
GDP成長率は8%近くに達し、中国は世界のサプライチェーンの中心という地位を確固たるものにしていた。
2008年に行われた北京夏季五輪は世界で称賛され、同年5月に発生した四川大地震には香港の人々から莫大な寄付が寄せられた。
当時の輝きはほぼ失われた。今年の成長率は3%を下回る可能性があり、債務と倒産と失業が膨れ上がっている。
国際的評判も急降下した。香港では2019年頃に反体制派の活動が活発化し、今年2月の北京冬季五輪は中国の人権問題に対する批判が暗い影を落とすなかで開催された。
つまり、習の統治の下で中国の地盤沈下が大きく進んだのだ。
対外強硬路線で支持を獲得
中国では伝統的に、指導者を3つの基準に照らして評価してきた。その基準とは、「立徳」(道徳を確立すること)、「立功」(業績を上げること)、「立言」(思想を遺すこと)である。
政策面での数々の失敗は、習が「立功」の基準で不合格であることを意味する。
「立徳」に関しても大きな疑問符が付く。習は1985年から17年間にわたり、福建省で要職を歴任した。その時期に同省を舞台に中国史上最大とも言われる密輸事件が起き、百数十人もの党幹部や役人が有罪判決を受けた。ところが、習は目の前で起きていたはずの不正を全く知らなかったと言ってのけている。