ミャンマー、久保田氏収監の刑務所で爆発2回 爆弾テロか8人死亡
これまでに爆弾事件の犯行声明は出ていないが、治安当局では反軍政を掲げて抵抗を続ける武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」による犯行の可能性が高いとみて捜査を続けている。
インセイン刑務所は房内の劣悪な環境、刑務官による恣意的な暴力行為などでミャンマー国内で最も悪名高い刑務所といわれている。
2021年4月に「虚偽のニュースを流した罪」で逮捕され約1カ月後に釈放、国外退去になった日本人フリージャーナリスト北角祐樹氏もこのインセイン刑務所に収監されていた。また2022年7月30日に入国管理法違反などで逮捕された久保田徹氏も入管法、扇動罪、電子取引法違反による裁判で禁固10年の判決を受けてインセイン刑務所で現在服役中だ。
これまでのところ収監中、服役中の人に死傷者が出ているとの情報はなく、久保田氏については日本大使館が安全を確認した。
受刑者の「頼みの綱」がなくなる?
警備が厳重なことでも知られるインセイン刑務所の内部で起きた爆弾テロ事件だけに、今後治安当局や刑務所側による差し入れに来た家族とその荷物への検査が厳重になることは間違いない。場合によっては当面差し入れ禁止の措置も予想され、家族からの食料などの差し入れが「頼みの綱」「生きる力」とする受刑者などの反発が起きる可能性もある。
またこの爆弾テロが反軍政のPDFの犯行とすれば、PDFがその影響力を次第に強めていることの証左ともいえ、ミン・アウン・フライン国軍司令官以下軍政には大きなショックであることは間違いないだろう。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など