怒り狂う父に叫んだ言葉...カルト教団で「性的サービス要員」候補だった少女の「脱出の記録」
I Escaped a Cult
フランス南部で行われた「チルドレン・オブ・ゴッド」の摘発(1993年6月) STRINGER-Reuters
<16歳以上の女性に「宗教的売春」を強要するカルト教団から逃げ出し、外の世界で戦ってきた私を、理解してくれる人や場所を見つけることができた>
自由になりたかった。どうしても。父の顔は怒りで真っ赤だった。私はドアを開け、心の中で9年間、積み上げてきた叫びを口にした。「ファミリーをやめたい!」
■【写真】その美貌により、カルト教団内で「性的な要員」と見なされることになった筆者のヤング
チルドレン・オブ・ゴッド(現ファミリー・インターナショナル)は、1968年に「預言者」デービッド・バーグによって設立された。信者は俗世の財産を捨ててイエス・キリストに人生をささげ、「ファミリー」として共同生活を営んだ。子供たちは共同体の中で育てられ、搾取された。私は、宗教ビデオを世界中で売るために働かされた。
バーグは、神はセックスを愛していて、悪魔がセックスを悪魔化したと説き始めた。私が脱出した理由の1つもそれだ。あと5カ月ほどで16歳になるので、セックス要員と見なされる予定だった。
教団の「宗教的売春」は1974年に始まって87年まで続いた。魅力的な女性信者が「男を釣る漁師」として、信者を増やし寄付を集めた。
メキシコの山奥の教団施設を出た15歳の私は、グレイハウンドのバスを降りてアメリカの地を踏んだ。長い旅だった。私の家族は代々の信者で、教団が「システム」と呼ぶ外の世界は純粋な悪だと、心の底から信じていた。
就学や予防接種の記録が一切なかった
その地の高校で、私は告げられた。「残念ですが、あなたを入学させられません。あなたは存在しません」
私には就学や予防接種の記録が一切なかったから、状況は理解できた。それでも、裏切り者はどうなるかと教団に繰り返し脅されてきたとおりでもあった。その後もずっと、自分が別の惑星から来たような気がして苦しかった。
白人でブロンド、なまりも少ないという「特権」のおかげで、私は一人の悩めるティーンエージャーとしてアメリカの片隅でひっそりと生きることができた。テキサス州ヒューストンで、先に教団から逃げた姉と暮らし始めた。
姉のボーイフレンドが州を説得してくれて、高校を2年間で卒業することができた。大学も優秀な成績で卒業したが、自分の将来について考えたことは一度もなかった。
卒業後に米軍に入隊したのは、自分が溶け込める世界だと思ったからだ。外の世界のカオスを経験した私は、組織の中に戻りたくて仕方がなかった。どこに行って何を着るべきかを教えてくれる人がいて、仲間が周りにいて、私たちが共有する使命は正しいものだと思えるところに。