犯罪者の家族がこれほど非難されるのは日本ぐらい
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<例えば秋葉原無差別殺傷事件だと、犯人の父は引きこもり、母は精神科入院、弟は自殺している。加害者家族は「常識的な人」が多いというが、厳しい現実、難しい問題が横たわっている>
『「死刑になりたくて、他人を殺しました」――無差別殺傷犯の論理』(インベカヲリ著、イースト・プレス)は、通り魔や殺人犯などの犯罪加害者に寄り添い、彼らの気持ちを理解しようと尽力する人たちの声を集めたルポルタージュ。
秋葉原無差別殺傷事件(2008年)犯人の加藤智大の友人であった大友秀逸氏、宅間守(児童8人を刺殺した2001年の附属池田小事件)・宮崎勤(1988~89年の連続幼女誘拐殺人事件)らの精神鑑定士を勤めた長谷川博一氏、東京拘置所において死刑囚の教誨師として活動しているハビエル・ガラルダ氏、1968年に4人を射殺した連続殺人犯・永山則夫の元身柄引受人候補である市原みちえ氏など、登場する人物も多岐にわたっている。
そのため、加害者とはまったく異なる日常を送っている私たちは、この本から殺人犯たちの知られざる側面を知ることができる。
事件の性格や背後関係、犯罪加害者の思いなどは多様だが、そんな中で個人的にいちばん引き込まれたのは、第一章「加害者家族を救う人」であった。
単なる偶然なのだが、渋谷の神泉で中学3年生の少女が見ず知らずの母娘を背後からナイフで刺したという事件が、まさにこの章を読み始めたばかりのタイミングで起きたからだ。
報道を耳にしたとき、以下の文章が頭の中であの事件とつながってしまった。
事件の容疑者が逮捕されると、当の本人は身柄を拘束され、世間からシャットアウトされた場所に身を置くことになる。一方、その家族は報道陣に囲まれ、親は辞職に追い込まれたり、子は退学させられ、引っ越しを余儀なくされたりなど、生活が一変してしまうことが多々ある。世間の非難を一身に浴びるのは、実は犯人ではなくその家族のほうなのだ。(6ページより)
少女は母親と、1歳年下の弟との3人暮らしだと聞いていた。そのせいか、「犯した罪が重ければ重いほど、その家族は追い詰められることになる」というフレーズが重くのしかかってきたのだ。
そこで今回は、この章をクローズアップして話を進めたい。
「日本は加害者家族がもっとも生きづらい国」
第一章で著者の質問に答えているのは、加害者家族をサポートするNPO法人、WorldOpenHeart理事長の阿部恭子氏。宮城県仙台市を拠点として2008年に活動を開始し、これまでに2000件以上のサポートを行ってきたという人物だ。全国の加害者家族からの相談を24時間対応で直接受けているというのだから驚かされる。