なぜ統一教会は今も「大きな影響力」を持っているように見えるのか【石戸諭ルポ前編】
JUDGMENT DAY
鳩山政権誕生時に、何か助けを請われていたか否か。鳩山事務所に取材依頼を送ったところ、インタビューは断るという回答と共に「そもそも同教会との係わりはありませんので、事実としてもあくまでも儀礼的なものであり、本人には正直記憶すらありません」と返答があった。
小山田の薫陶を受けていた鳩山ですら、関係を忘れたのだという。説明責任を果たそうという意思は感じられなかった。
冷戦終結以降、統一教会は実際の選挙運動にはどう関わっていたのか。首相候補としても名が上がった、自民党の国会議員Aの元秘書が取材に応じた。Aの選挙に携わっていた秘書、陣営関係者の証言によれば、Aの事務所には統一教会信者が私設秘書として入り込んでいた。その人物を仮にOとしておこう。
陣営には、Oから高額の壺の購入を勧められた、布教を受けたというクレームが支援者から入ることがあったが、不問に付されていたという。Oの働きが一定程度評価されていたからだ。当時、協力関係になかった公明党支持者の家も含めてくまなく歩き、ポスターを貼った。
「もともと2つあった後援会を足し合わせて、3つに分ける。そうすると1つ後援会が増えたように見える。自分が後援会を増やした、と報告して信用を勝ち得た」(Aの元秘書)
統一教会からの集票はOが担当していたが、票そのものは多くはなかった。重宝されたのは、献身的な働きであり、Oも統一教会も国会議員秘書の肩書を必要としていた。Oの狙いはその先の政界進出にあった。
彼は2000年代に入り、民主党系会派の地方議員に転じた。2期8年務めたが、3選を目指す選挙であっさり落選した。票の動きを見る限り、政党への「風」のほうが、団体票より当落への影響は大きかったようだ。
政治家にとって教団の支援を受けるメリットは、選挙区によって異なる。別の自民党議員秘書は言う。
「2010年代にも統一教会から派遣された秘書がいたが、高齢で交代要員らしい人もいなかった。話もかみ合わず、秘書ネットワークからも外れていた。大した票も持っていない統一教会を頼るのは選挙に弱い議員だけというのが共通認識だ」
選挙実務も取り仕切る秘書たちに聞く限り、かつてOのような存在は決して珍しくはなかった。だがこれから増えていくものとも思えない。
※ルポ中編:選挙応援「ダサい」、親への怒り、マッチングサイト...統一教会2世たちの苦悩 に続く。