最新記事

イギリス

イギリスの社交場パブが大量閉鎖の危機 エネルギー高騰直撃で常連客が出費切り詰め

2022年9月3日(土)12時22分
ロンドン北部のパブ「レッド・ライオン・アンド・サン」のジェームズ・カスバートソン氏

緑豊かなロンドン北部に建つパブ、「レッド・ライオン・アンド・サン」。英国全土に散らばる数千軒のパブと同じく、この店も冬が来ればエネルギー料金高騰のあおりで破産するのではないか、と戦々恐々としている。写真はジェームズ・カスバートソン氏。同パブで8月撮影(2022年 ロイター/May James)

緑豊かなロンドン北部に建つパブ、「レッド・ライオン・アンド・サン」。英国全土に散らばる数千軒のパブと同じく、この店も冬が来ればエネルギー料金高騰のあおりで破産するのではないか、と戦々恐々としている。コロナ禍で休眠状態だった数年間が過ぎ、ようやく立ち直りかけたところだというのに──。

この店のエネルギー代金は今年、年間6万5000ポンド(7万6000ドル)と、前年の1万6000ポンドから4倍以上に跳ね上がる見通しだ。ロンドンとイングランド南東部で、ここを含めてパブ3軒を経営するザ・フリスコ・グループのディレクター、ジェームズ・カスバートソン氏が明らかにした。

「うちは、利益を年間5万ポンド増やさなければならない計算だ。ところが、消費者自身の生活費も高騰しているため、利益は足踏みしている」と話す。

レッド・ライオン・アンド・サンが抱えるジレンマは、英零細事業の典型的な事例だ。エネルギー分析会社、コーンウォール・インサイトの試算では、英零細企業は今年の冬のエネルギー契約更新交渉で、2年前に比べて平均4、5倍の料金引き上げを迫られている。

この間、英国の天然ガス卸売価格は14倍に高騰した。ロシアウクライナに侵攻した今年2月以降に倍増した分が反映されている。

カスバートソン氏や同業者にとって、採り得る選択肢は「値上げ」、「スタッフの削減」、「営業時間の短縮」、さもなければ「完全な閉店」だ。

コロナ禍に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で、英国で昨年閉店したパブは400軒以上に上ったことが、英不動産分析会社の調べで分かっている。この数はさらに急増しかねない。

英ビール・パブ協会(BBPA)のエマ・マクラーキン代表は「地域社会にある良いパブが、身の処し方を問われるのを見るのは非常につらい」と言う。

BBPAなど接客業界団体の調べによると、今は英国の接客企業の約3分の2が赤字となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中