イギリスの社交場パブが大量閉鎖の危機 エネルギー高騰直撃で常連客が出費切り詰め
緑豊かなロンドン北部に建つパブ、「レッド・ライオン・アンド・サン」。英国全土に散らばる数千軒のパブと同じく、この店も冬が来ればエネルギー料金高騰のあおりで破産するのではないか、と戦々恐々としている。写真はジェームズ・カスバートソン氏。同パブで8月撮影(2022年 ロイター/May James)
緑豊かなロンドン北部に建つパブ、「レッド・ライオン・アンド・サン」。英国全土に散らばる数千軒のパブと同じく、この店も冬が来ればエネルギー料金高騰のあおりで破産するのではないか、と戦々恐々としている。コロナ禍で休眠状態だった数年間が過ぎ、ようやく立ち直りかけたところだというのに──。
この店のエネルギー代金は今年、年間6万5000ポンド(7万6000ドル)と、前年の1万6000ポンドから4倍以上に跳ね上がる見通しだ。ロンドンとイングランド南東部で、ここを含めてパブ3軒を経営するザ・フリスコ・グループのディレクター、ジェームズ・カスバートソン氏が明らかにした。
「うちは、利益を年間5万ポンド増やさなければならない計算だ。ところが、消費者自身の生活費も高騰しているため、利益は足踏みしている」と話す。
レッド・ライオン・アンド・サンが抱えるジレンマは、英零細事業の典型的な事例だ。エネルギー分析会社、コーンウォール・インサイトの試算では、英零細企業は今年の冬のエネルギー契約更新交渉で、2年前に比べて平均4、5倍の料金引き上げを迫られている。
この間、英国の天然ガス卸売価格は14倍に高騰した。ロシアがウクライナに侵攻した今年2月以降に倍増した分が反映されている。
カスバートソン氏や同業者にとって、採り得る選択肢は「値上げ」、「スタッフの削減」、「営業時間の短縮」、さもなければ「完全な閉店」だ。
コロナ禍に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で、英国で昨年閉店したパブは400軒以上に上ったことが、英不動産分析会社の調べで分かっている。この数はさらに急増しかねない。
英ビール・パブ協会(BBPA)のエマ・マクラーキン代表は「地域社会にある良いパブが、身の処し方を問われるのを見るのは非常につらい」と言う。
BBPAなど接客業界団体の調べによると、今は英国の接客企業の約3分の2が赤字となっている。