最新記事

地震

M6.8の地震でもゼロコロナ優先で避難を許さない中国当局

China's Zero-COVID Rules Stop Citizens From Evacuating During Earthquake

2022年9月7日(水)16時38分
ジョン・フェン

マグニチュード6.8の地震に襲われた四川省のカンゼ・チベット族自治州で避難する住民(9月5日) China Daily/REUTERS

<大きな地震に襲われマンションから避難しようとすると、外に出られないよう鍵がかけられていた!? SNSから漏れてきた人命軽視の実態>

中国の四川省で9月5日に発生した地震で、一部の住民がゼロコロナ政策のために自宅や周辺地区から避難を許されなかったことが、ソーシャルメディアへの投稿から明らかになった。

現地時間の9月5日午後1時前に中国南西部の四川省を地震が襲ったとき、省都・成都の市民は、高層マンションから階下に降り、空き地へ向かおうとした。だが、出口に鍵がかけられていたり、封鎖されていたりしたために、外に出られない住民が続出したという。住民を外に出さないための保健当局の措置だった。

「家にいるのがいちばん安全」と避難を止める文書と、保健当局に逃げ道を塞がれたマンションの住民


成都では、地震が起きるほんの数時間前に、新型コロナウイルスの感染急増を防ぐために2100万人の住民の大半に対する隔離政策を3日間延長が決まったばかりだった。住民は9月7日までに、追加で3度、新型コロナウイルス感染症の検査を受ける予定になっていた。

中国地震局がマグニチュード6.8と発表した地震の震源は、四川省南西部にあるカンゼ・チベット族自治州の瀘定県(ろていけん)。死者の数は、6日午後2時の時点で66人と、中国国営の新華社通信は報じている。負傷者や行方不明者も数百名にのぼっている。

中国版のTikTok「抖音(ドウイン)」に投稿されたある動画では、小さな子どもやペットを含む近隣の住民が、建物のロビーに立ちつくしている。建物から避難しようとしたが、出口に鎖がかけられていて出られなかったのだ。

今は削除された別の動画には、自宅のある区画の施錠されたゲートの向こうから、医療従事者をののしる年配の男性の姿が映っている。「早く来て扉を開けろ! 地震が起きたんだ!」と、この男性は叫んでいる。「揺れはもう収まった」と、誰かが返事をする。

管理人も避難に反対?

これらの動画についたコメントの多くは、緊急時にもかかわらず柔軟性に欠ける新型コロナウイルス対策に疑問を投げかけている。

「エントランスをふさぐのは完全に間違っている。非常用出口は開けておかなければ!」と、1人のユーザーは言う。別のユーザーは、「こんな風にエントランスを封鎖すれば、大地震の時にはみんな死んでしまうおそれがある。出口が空いていれば、半分以上の人は逃げられただろうに」と書いた。

「これはやりすぎでは? 感染症の流行なら(死ぬことは)免れるかもしれないけれど、大地震なら確実に死んでしまう」とコメントしたユーザーもいる。

また信憑性は未確認だが、建物の管理者が住人グループに対して避難を禁じたともとれる文面のスクリーンショットも出回っている。

地震翌日の6日には、緊急時の優先順位をめぐる議論が、中国のソーシャルメディアでトレンド入りした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4

ビジネス

ECB、12月にも利下げ余地 段階的な緩和必要=キ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中