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【寄稿:有田芳生】全国から91人の女性信者が旅館に集められ... 統一教会「政治秘書養成」秘録

A TAINTED TRAJECTORY

2022年9月14日(水)10時05分
有田芳生(ジャーナリスト、前参議院議員)

議員秘書も支援議員も表に出すことなく、しかし国会議員、地方自治体議員、地方自治体への浸透は着実に行われていった。安倍元首相暗殺事件をきっかけに、旧統一教会のフロント団体が、例えば「世界平和連合」や平和をうたった自転車イベント「ピースロード」といった宗教色のないかたちで政治家と関係を持ってきた数々の事実が浮上した。

旧統一教会と保守政治との関係は、東西冷戦激化の下で、1960年代末から国際勝共連合を通じて強化された。「反共産主義」で一致したのだ。

岸信介元首相は、1973年4月8日に日本の統一教会本部で「アジアの危機と青年の使命」と題する講演を行い、さらに文鮮明と1973年11月23日に韓国の統一教会本部で会談。岸は1984年11月19日から22日に東京のホテルニューオータニで行われた文教祖提唱の「世界言論人会議」でもスピーチを行っている。

このとき文教祖は脱税のためアメリカ・ダンベリーの刑務所に収監されていた。この集会直後の1984年11月26日に岸はアメリカのロナルド・レーガン大統領に宛てて書簡を出していた。これは米カリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館のファイルにあったもので、ジャーナリストの徳本栄一郎が「週刊新潮」の依頼で発掘したものである。

「文尊師は、現在、不当にも拘禁されています。貴殿のご協力を得て、私は是が非でも、できる限り早く、彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたいと思います」「文尊師は、誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております」と書簡にはある。

文教祖の釈放は1985年夏であり、岸の嘆願は実現しなかったが、2人の特別な関係がこの書簡にはあからさまに記録されている。

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刑期を終え、ニューヨークの更生施設へ移送される文鮮明(1985年) AP/AFLO

文教祖は、1992年3月に金丸信自民党副総裁などの政治力を使って日本入国を果たした。政治家との関係を強化し、利用する。これは統一教会組織の基本なのだ。

やがて統一教会は岸信介元首相の娘婿の安倍晋太郎議員を首相にするべく支援をした。中曽根康弘首相の後継者が竹下登議員か安倍晋太郎議員かが取り沙汰されたとき、後者を推したのは、岸信介直系だったからである。「安倍晋太郎さんを総理にすると内部では言われていた」と多くの元信者が証言している。

その晋太郎の秘書を務めたのが息子の安倍晋三であった。統一教会からすれば、岸信介―安倍晋太郎―安倍晋三の系譜は、教団が歴史的に支援し、関係を深める重要な人脈だったのだ。

政治の暗部は解明されていない

私は安倍晋三議員が幹事長のとき、ご本人に「統一教会が接近してきませんか」と聞いたことがある。「しょっちゅう来ますけど、会わないようにしています」。それが回答だった。

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