最新記事

統一教会

【寄稿:有田芳生】全国から91人の女性信者が旅館に集められ... 統一教会「政治秘書養成」秘録

A TAINTED TRAJECTORY

2022年9月14日(水)10時05分
有田芳生(ジャーナリスト、前参議院議員)

教団派遣の秘書は今もいる

このころ統一教会は友好組織である国際勝共連合を通じて、自民党を中心とする国会議員に教団の支援者になるよう働き掛けていた。それが「勝共推進議員」としてやがて国際勝共連合の機関紙「思想新聞」に公開された。105人の国会議員はほぼ自民党(いまだに現役の議員も多い)で、野党・民社党議員もいた。

後に150人になったと思想新聞が公表した勝共推進議員とは、どういう役割があったのだろうか。それは統一教会信者たちが選挙運動を支援する代わりに、①統一教会の教えを学ぶため、韓国で開かれるセミナーに参加する、②国際勝共連合系の議員であることを認める、③統一教会を応援する、という条件を受け入れる議員たちのことだ。

石原は私にこうも語っていた。

「ある秘書が1枚の書類を持ってきて、サインするよう求めたんだ。それを読むと『私は文鮮明氏の教えに完全に共鳴し......』といった内容だったね。それにサインすれば、統一教会員が全面的に選挙を手伝い、秘書も送りますという。この書類にサインした人たちが、当選後、勝共推進議員として公表されているんだろう。私が雇っていた統一教会員の秘書は、後援会の支部長に、勝共連合の支部長になってくれと頼んだり、朝鮮人参エキスを売ったりと、勝手な行動もしていて、最後は不審な行動を目撃したので辞めてもらった」

嵯峨亭での秘書養成講座の参加者は1期生だった。その後のことは分からない。だが、これに参加した女性信者は、1989年に「アイザック」という統一教会と関係の深い英会話教室に勤めている統一教会会員から、新井将敬議員の秘書がプライベートレッスンを受けに来ていると聞いたそうだ。

常識的に判断して統一教会が組織として自民党政治家に接近したからには、その後も継続して秘書を送り込んでいるだろう。

安倍晋三元首相暗殺事件をきっかけに、自民党最大派閥である清和政策研究会(安倍派)を中心とした100人以上の政治家が旧統一教会と関係していたことが浮き彫りになった。そこに信者秘書が全くいないとは考えにくい。

だが「週刊文春」で行った調査報道以降は、教会が警戒して国際合同結婚式参加者名簿を内部機関誌に公表しなくなったので、取材の端緒さえつかめなくなってしまった。私はつい最近、自民党の大臣経験者に統一教会信者の公設秘書について尋ねたところ、「何人もいるよ。みんな優秀なんだ」と教えてくれた。

文鮮明の釈放を嘆願した岸

さて、「勝共推進議員」である。1990年に思想新聞が勝共推進議員(「特別会員および顧問」)を公開したのを最後に、これまた統一教会を支援する議員の公表が行われなくなった。ここでもまた「空白の30年」である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、近く政権離脱か トランプ氏が側近に明かす

ビジネス

欧州のインフレ低下、米関税措置で妨げられず=仏中銀

ワールド

米NSC報道官、ウォルツ補佐官を擁護 公務でのGメ

ワールド

トランプ政権、輸入缶ビールに25%関税賦課 アルミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中