シャワーは職場で食事は1日1回 急騰する光熱費が欧州の家計直撃
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欧州では人々がアイロンがけをやめ、オーブンを使うのを制限し、帰宅前に職場でシャワーを浴びるなど、必死で家庭内の省エネに努めている。写真は2012年11月撮影(2022年 ロイター/Nigel Roddis)
欧州では人々がアイロンがけをやめ、オーブンを使うのを制限し、帰宅前に職場でシャワーを浴びるなど、必死で家庭内の省エネに努めている。それでも光熱費の負担は増大する一方だ。
天然ガスと電力の卸売り価格が高騰するとともに、欧州では何百万人もの所得に占めるエネルギー支出の比率が過去最大に達していることが各種データで分かる。
英イングランド地方東部グリムズビーに住むフィリップ・キートリーさんの場合、英国が記録的猛暑に襲われたこの夏も、扇風機の電源を入れなかった。銀行口座の残高を見て、電気代が払えないと知っていたからだ。「生活費は増えたが、収入は(エネルギー)危機前の金額しか期待できず、私は食費と光熱費のどちらか1つしか確保できない」と窮状を語る。
欧州大陸諸国でも事情は変わらない。ロシアのウクライナ侵攻と西側による対ロシア制裁、さらに「ポストコロナ」の需要拡大が加わってガス、電力、燃料の価格が高騰しているため、市民は自発的な省エネ活動に勤しんでいる。
欧州ガス価格の指標となるオランダTTFは過去12カ月で550%も上昇。英ガス電力市場監督局(Ofgem)は26日、家庭の電気・ガス料金が10月から80%引き上げられ、標準世帯で年3549ポンド(4188ドル)になると表明した。
こうした中で欧州各国政府は急いで家計支援策を打ち出したものの、データを見る限り大きな効果は得られていない。
環境問題を扱う専門情報サイトのカーボン・ブリーフが政府統計に基づいて計算したところでは、英国民はこの冬、世帯収入の平均10%をエネルギー(ガス、電力、暖房油、ガソリン、軽油など)に支出する見通しだ。
この点では現在のエネルギー危機は、1970年代と80年代に経験した石油ショックよりも深刻と言える。西側では産油国の禁輸措置や1979年のイラン・イスラム革命で停電が発生し、ガソリンスタンドには長蛇の列が発生。ところが当時危機がピークを迎えた1982年でも英国で世帯収入に占めるエネルギー支出は9.3%だった。
英慈善団体ナショナル・エナジー・アクション(NEA)は、電気・ガス料金の上限が跳ね上がる10月以降にエネルギー面で貧困に陥る家庭は、昨年10月の450万世帯から890万世帯に増加しかねないとみている。
NEAなどの慈善団体の定義では、低所得層が収入のうち10%以上をエネルギー支出に回す必要が出てくると、「エネルギーの貧困」とされる。NEAの政策・意見ディレクター、ピーター・スミス氏は「われわれが目にしているエネルギー料金の上がり方は全く過去に例がない。低所得家庭の収入に占めるエネルギー支出が不相応に高まる歴史的傾向も引き続き見られる」と指摘した。