シャワーは職場で食事は1日1回 急騰する光熱費が欧州の家計直撃
過去の危機より値上がり
キートリーさんは4月に失業し、現在は毎月600ポンドの生活保護で暮らす。その半分は家賃の支払いに充て、残りで生活必需品をかろうじて賄っている。
今は食事も1日1回しか取らず、エネルギー消費を最低限に抑えているにもかかわらず、収入に占めるエネルギー支出は15%を超える。
フィナンシャル・フェアネス・トラストが行った調査によると、英国の3分の1の家庭は調理家電やオーブンの使用、またシャワーを浴びる回数を減らしている。この調査にかかわったブリストル大学のシニアリサーチ・アソシエート、ジェイミー・エバンス氏は「人々はエネルギー費用圧縮のため多大な努力をしているが費用は上がり続けている。だからこそわれわれは政府に追加的な対応を求めたい」と訴えた。
イングランド地方の南東部に住むドーン・ホワイトさん(59)は腎不全を抱えており、このまま光熱費の上昇が止まらなければ命をつなぐための治療費が払えなくなると不安を募らせている。ロイターに「1週間に5回、20時間の(人工透析)機器がなくなれば、私は生きていられない」と打ち明けた。
国際エネルギー機関(IEA)の指数によると、ほとんどの欧州先進国の家庭に適用されるガス価格は今年初め、1970年代や80年代、2000年代に起きた過去のエネルギー危機のピーク時を超えた。
欧州は他の先進地域に比べても負担が重い。今年第1・四半期末までの段階では、経済協力開発機構(OECD)のガス指数はまだ過去の危機のピークに達していなかった。
IEAのデータを1978年までさかのぼると、過去40年の平均的な天然ガス価格は確かに米国家庭向けの方が高い。しかし欧州家庭向け価格は今年になって米国家庭向けを上回った。
独伊が最も痛手
欧州連合(EU)加盟国の中で、ガス価格高騰で最も痛手を被っているのはイタリアとドイツの家庭であることを、IEAのデータは示している。
イタリアの平均的家庭のエネルギー支出(主にガスと電気)が世帯支出に占める比率は今年7月、2019年の3.5%から5%に上昇した。OECDのデータによると、この7月の水準は1995年以降で一番高い。
価格ポータルのチェック24が集めたデータからは、ドイツ家庭の7月のエネルギー費用も、昨年に比べて2倍以上に膨らんだことが見て取れる。ミッドテラス住戸に住む家庭に適用される暖房油の5月分価格は前年比78%上がった。
フランクフルト北東のニッダに暮らすエルカン・エルデンさん(58)は、自身が働くミネラルウオーター工場で「仕事終わりにシャワーを浴び、ひげをそる毎日だ」と話した。
(Bozorgmehr Sharafedin記者、Canan Sevgili記者)
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