ミャンマー、元英国大使に禁固1年の実刑 スピード判決は制裁続ける英国への牽制か
日本人ジャーナリスト久保田氏は拘留中
こうしたボウマン氏の異例ともいえるスピード審理の一方、7月30日にヤンゴン市内で身柄を拘束された日本人映像ジャーナリストの久保田徹氏に関してはこれまでのところ裁判所で判決が出たという情報は漏れてこない。
久保田氏は8月16日にインセイン刑務に設けられた特別法廷で初公判が開かれたものの、その後の情報はなく、相変わらずインセイン刑務所での未決勾留の状態が続いているものとみられている。
久保田氏はヤンゴン市内南ダゴン郡で行われた反軍政のデモを取材中に同行していたミャンマー人2人と共に当局に身柄を拘束された。容疑は観光ビザでミャンマーに入国しながらジャーナリストとして「取材活動」をしたことが入管法の「資格外活動」に問われて訴追されている。
当初は日本政府からの要求や自民党関係者の現地訪問で「早期釈放」を求めたことなどから早期に判決が出てその後国外追放になって帰国できるのではないかとの希望的観測もあったが、拘束から1カ月が経過しても実現には結びついていない。
久保田氏は刑法505条に基づく「社会秩序を乱そうとする扇動罪容疑」にも問われているとされていることが早期釈放に影響しているとの見方もある。
2001年4月18日に久保田氏と同じくヤンゴン市内で取材活動中に身柄を拘束されたジャーナリスト北角祐樹氏は拘束から28日後の5月14日に釈放、帰国している。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など