ロシア経済制裁の効力──企業による「自主制裁」が効いていたという結果
TRADING WITH THE ENEMY
14年に西側諸国がクリミア併合に対して制裁を発動して以来、ロシアは輸入品の代替政策を推進。ベラルーシなどユーラシア経済同盟加盟国からの輸入と国内生産で穴を埋めようとした。ウクライナ侵攻を開始した翌日には、産業貿易省が「(輸入品の代替措置は)確立され、運用されている。あらゆる系統の代替品を調達できる」と声明を出した。
だがこの戦略は、特にテクノロジーと工業分野では成功していない。シンクタンクのGISリポーツ・オンラインによれば、ロシア経済は規模が小さく効率が悪いため、制裁で不足した物資を補うことができない。資本の流出も妨げとなり、調達できるのは「二流の代替品」だ。
西側企業なしでは生きられない
その影響はウクライナの戦場でも明らかだ。ロシアが誇る長距離精密兵器は外国製の部品に依存している。米国防総省のジョン・カービー報道官は5月の記者会見で、「プーチンが精密誘導兵器の部品を入手しにくくなっていることと、ロシアの国防産業が現状をカバーできない理由の一部は制裁にある」と語った。
英シンクタンクの王立統合軍事研究所(RUSI)も4月の報告書で、「部品の一部はロシアでも製造できるだろうが、コストが高くなり、信頼性は下がる可能性がある。ロシアの複雑な兵器の多くの部品は代替が利かない」と述べている。
ブリュッセルに拠点を置く政策シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のロシア担当シニアアナリスト、オレグ・イグナトフは次のように語る。
「ロシアは可能な限り制裁を回避しようとするだろう。14年の時と同じだ。彼らは西側の製品を通じて西側の技術に依存している。軍産複合体さえ、西側の技術に依存しているだろう。国内で全てを賄うことはできない......ロシア人の生活の質は下がるだろう」
イグナトフはさらにこう指摘する。「西側の企業なしで、彼らの製品なしで、どうやって生きていくのか。ロシアは現実を予測するのではなく、問題が起きてから反応する......西側はロシアなしでは生きていけないから制裁を見直すはずだと、彼らは今も信じている」
ロシアは化石燃料と食糧の輸出に関する経済的影響力を利用して、西側のウクライナ支援を弱体化させ、EUとNATO諸国に制裁を緩和させようと躍起になっている。
プーチンや政府高官は、迫りくる穀物危機を緩和する唯一の方法は、制裁を緩和することだと述べている。さらに、ヨーロッパはロシアの石油とガスへの依存をすぐには解決できないだろうという希望も抱いている。
実際、BDIのニーダーマルクは6月の民主主義サミットで、「電気のスイッチのように明日から突然、切り替えることはできない」と語った。
ロシア経済はあまりに大きく、彼らを世界市場から追い出せば悪影響は避けられない。「イランとは違う」と、イグナトフは言う。「ロシアのような国を世界経済から排除することは、大きな前例になるだろう。それが非常に難しいことはロシアも西側も理解している」