ロシア経済制裁の効力──企業による「自主制裁」が効いていたという結果
TRADING WITH THE ENEMY
現在の犠牲は未来への投資
ブルームバーグの報道によれば、企業が自主的な制裁に予想以上に前向きなことは、米政府としても意外なようだ。記事の中でジャネット・イエレン米財務長官に近い匿名の情報源は、ロシアからの資本逃避が、アメリカのインフレ率が過去40年で最も高くなっている一因だと述べている。
米政権幹部からは、米企業がロシアから完全に撤退するのは間違いかもしれないという声さえ出ている。「アメリカのソフトパワーを(ロシアから)取り除くことが、本当にアメリカの望むことなのか」と、米国務省のジム・オブライエン制裁調整室長は言う。
「それは経済学者の無邪気さか、現実を知らない外交官の考えだ」と、エール大学経営大学院のソネンフェルドは言う。
「残ることは、影響力になるのではなく(相手の行為を)支持していることになる。ナチス・ドイツとの戦争が勃発した時、ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)やテキサコ、チェース(・マンハッタン)銀行は現地から撤退を強いられた。もっとも、彼らは建設的な役割を果たしていたわけではない。戦争の苦しみから暴利を貪っていただけだ」
一方で、今の欧州の指導者は市民に対し、経済的な痛みを覚悟するように警告している。ロベルタ・メッツォラ欧州議会議長は民主主義サミットで本誌に次のように語った。
「ヨーロッパの一部の地域では、市民は極めて深刻な失業に直面しており、請求書の支払いもできず暖も取れない冬が迫っている」
「プーチンは世界をにらみつけ、こちらが目を伏せるのを待っている。しかし、私たちは目を伏せるわけにはいかない。現在の経済的犠牲は、私たちが、次の世代が、自由で民主的な世界で生きていくための投資なのだ」
ロシアと決別するという西側の決意を、世界が注視している。「独裁国家との取引に確実なものはないことを、私たちは今まさに痛感している」と、ニーダーマルクは民主主義サミットで語った。
特に中国は、ロシアより経済規模がはるかに大きく、西側と密接に関係しているため、例えば中国が台湾を侵略した場合、対中制裁は経済的に激しい反動を生む可能性がある。
「中国でも同じようなことになれば、私たちは誰のことも守れない」と、ニーダーマルクは言う。「経済は大混乱に陥るだろう。中国の原材料、加工原材料、レアアース、金属、中間製品、そしてもちろん消費財への依存度は非常に高いのだ」
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