ロシア経済制裁の効力──企業による「自主制裁」が効いていたという結果
TRADING WITH THE ENEMY
「ロシアとの関係はこの先長い間、破綻したままだろう」と、ニーダーマルクは言う。「プーチン大統領は文明世界における最低限のコンセンサスを放棄したのだから、当面ロシアと正常な商取引を行うのは不可能。このことを政府や企業も受け入れなければならない」
「ドイツ企業がロシアとのビジネスを再開するには、停戦だけでは足りない。国際法に背きウクライナで犯罪行為を行うロシアは、その振る舞いを根底から改める必要がある。だがそんな変化は当分望めない」
王立国際問題研究所のアッシュもまた、欧米とロシアの関係は根本的かつ長期的に変化したと考える。
「企業は撤退により相当の損失を被っており、そのことをすぐには忘れないだろう」とアッシュは言い、撤退した企業の資産を国有化するというロシア政府の方針が取引の再開をさらに妨げると予想する。「企業の自主制裁が流れを大きく変えた」
企業の撤退はロシアを苦しめている。ロシアは輸入品を国産に切り替える「経済要塞化」を進めてきたが、主要産業は今も輸入が頼りだ。
ロシア中央銀行が2021年に出した覚書によれば、国営企業の65%が輸入に依存していた。6月、建設業界の団体が調査したところ、基本的な建設機械の少なくとも50%がアメリカとEUからの輸入品と判明している。
民間航空機の80%は外国製、主にエアバスやボーイングの製品で、両社ともロシアでの事業を凍結した。政府はロシアに残された外国企業所有の航空機を数百機押収したが、必要なスペアの部品は確保できないだろう。5月にビタリー・サベリエフ運輸相は、制裁のせいで「わが国の物流は崩壊寸前だ」と述べた。
ロシアを代表する自動車メーカー、アフトワズは部品不足で3月に生産を停止。6月に低価格な4人乗りの「ラーダ・グランタ」の生産を再開したものの、エアバッグも横滑り防止装置も緊急時にシートベルトを自動でロックする装置も装備されず、排ガスの基準値も満たしていない。