口先だけのアメリカに頼れない台湾の、パイロット不足の背景とは?
Facing a New Reality
2011~19年の間に新たに育成された戦闘機パイロットはわずか21人。新人が補充されないため現役のパイロットに過大な負担がかかり、それが近年相次ぐ空軍機の墜落事故の一因になっているといわれている。
20年以降、空軍機の事故は10回に上り、今年だけでもF16など少なくとも4機が墜落した。中国軍機がより近い空域に、より頻繁に飛来するようになり、台湾空軍機の緊急発進(スクランブル)回数が増え、機体とパイロット双方に負担がかかっている。
パイロット不足も軍事訓練期間の延長がままならないことも元をたどれば同じ問題に行き着く。それは台湾の人々の軍に対する根強い不信感だ。その背景には長く続いた戒厳令時代の軍の恐怖支配がある。
今の民進党政権が防衛力強化の重要性を一般の人々に強く訴えてこなかったことも問題だ。最近では政府も軍隊のイメージアップを図っているが、台湾の若者にとって入隊は魅力的な選択肢とは映らず、少子化と高齢化が兵員不足に追い打ちをかけている。
アメリカの政治家が来れば中国がおとなしくなるとか、いざとなれば米軍が守ってくれると思っているなら考えが甘すぎる。台湾は防衛力強化の重要性を認めて質と量の両面で増強を図るべきだ。
今回の演習に続き、中国は軍事パトロールなるものを常態化させるばかりか近い将来もっと大規模な演習を行うかもしれず、さらにはそれがただの演習ではなくなる日も来るかもしれない。台湾もアメリカも新たな現実を直視し、危機に備える必要がある。