口先だけのアメリカに頼れない台湾の、パイロット不足の背景とは?
Facing a New Reality
今年7月に実施された恒例の漢光演習で中国軍の侵攻に備えた模擬演習を行う台湾軍兵士 ANNABELLE CHIH/GETTY IMAGES
<ペロシ訪台時に原子力空母ロナルド・レーガンなど、米海軍の艦船が台湾近海に派遣されたが、中国の演習前に撤収。軍に対する根強い不信感に少子高齢化など、自前の抑止力で対抗するにも難題山積>
この夏ナンシー・ペロシ米下院議長の台北訪問に反発して、中国は台湾周辺で1週間近く軍事演習を行った。これを受け、ペロシ訪台の是非、訪台が台湾に及ぼした予期せぬ影響、米世論の反応などをめぐる議論がヒートアップし、今回の緊張の高まりを「第4次台湾海峡危機」と呼ぶべきかまで論争の的になった。
危機の呼称はさておき、ペロシ訪台で中台関係が新たな段階に突入したことは確かだ。中国の狙いは台湾周辺に「新常態」を構築すること。中国の軍事的な圧力を跳ね返すには、現状では台湾の防衛力はあまりにもお粗末だ。
アジア歴訪中の8月2日に行われたペロシ訪台はスパイ映画並みの緊迫感にあふれていた。中国の耳障りな警告、ぎりぎりまで伏せられていた訪台スケジュール、ペロシを乗せた飛行機が米軍の戦闘機に護衛されて台北に着陸し、台湾側が熱狂的に歓迎すると、台湾周辺に一気に広がったきなくさい空気......。
現実の世界では、この一連の出来事の影響は長く続く。報道陣のカメラが去ってもストーリーは終わらない。
台湾政府と民衆はペロシを歓迎したが、ペロシ訪台が招く状況には十分な準備ができていないようだった。台湾政府は中国の猛反発が大ごとではないかのように見せ掛けた。2000品目余りの台湾産の食品を一時的に輸入禁止にし、台湾周辺の6区域で実弾射撃を含む演習を実施するといった中国の懲罰的な措置に対しても涼しい顔を装った。
米空母は演習前に撤収
演習が始まった8月4日、台湾は現実離れした雰囲気に包まれた。中国の軍艦や軍用機が周辺の海や空をわが物顔に行き交い、台湾の漁船や船舶、飛行機は航行の自由を妨げられたが、人々は何ごともなかったように通常の生活を続けていた。
東南アジアの航空各社は台湾行きの一部の便を欠航するか演習区域を迂回したが、台湾政府もメディアも慌てず騒がずを決め込んでいた。実際には中国の軍事演習は封鎖の予行演習とも呼ぶべきもので、戦時には台湾を兵糧攻めにできることを見せつけたのだが......。
演習の一環として中国は台湾の北、東、南の海域に弾道ミサイルを発射。東の海域に落下したその一部は台湾上空を通過したが、台湾国防部(国防省に相当)は警告を発しなかった。