2050年には8億人の都市住民が水上生活に?──海面上昇と異常気象で急務の洪水対策
CITY OF WATER
だが国連環境計画(UNEP)が気候変動リスクの上昇に対応するのに必要と予測するレベルまで途上国を引き上げるには、この投資を5~10倍に増やす必要がある。途上国には30年までに年間1400億~3000億ドルが必要だと、UNEPはみている。
パンデミック後の支出計画のうち、気候レジリエンス強化に充てられるのはごく一部との見方もある。炭素排出量増加につながる対策が、「グリーン」なイニシアチブを4対1で上回っている。
沿岸からの「管理された後退」
アメリカでさえ、気候変動適応策への取り組みは遅かった。米議会は昨年11月にようやく、深刻化する洪水や山火事や暴風雨にコミュニティーが備えるのを支援する気候レジリエンス対策に多額の資金を充てることを承認した。
これは1兆ドル規模のインフラ投資法案の一環で、法案にはアイダで26人が死亡したルイジアナ州選出のビル・キャシディ上院議員(共和党)らが起草した条項が含まれ、気候レジリエンスへの取り組みに470億ドルが充てられた。
その結果、連邦緊急事態管理庁(FEMA)が洪水リスクから守るために住宅を買い上げたり、かさ上げしたりする年間予算は3倍以上の7億ドルに。陸軍工兵隊の建設予算は4倍以上に増え、116億ドルが治水や河川の浚渫(しゅんせつ)のプロジェクトに充てられる。連邦機関による内陸部や沿岸部の洪水マップや、予測向上のための4億9200万ドルも含まれる。
手始めとしては有望で、政治的な風向きが変わりつつある可能性を示すものだ。とはいえ、これで問題が解決するという幻想は誰も抱いていない。
ラモント・ドハティー地球観測所のジェイコブは、「真に持続可能な」解決策は沿岸からの「管理された後退」以外にないと確信している。
「(後退は)先見性のある政府の賢明な計画によって起きるか、あるいは災害によって起きるか」だと、彼は言う。ニューヨーク市は「今すぐ計画策定に取り掛かるべきだ。膨大なコストがかかるはずだから」。
どうやらこれからも、経験から学ぶことが気候変動対策の最も強力なモチベーションになることに変わりはなさそうだ。
「今はまだ、この地球の大気圏と気候の中で起きていることにひたすらショックを受けている段階だ」と、都市レジリエンスに取り組むサルキンは言う。気候変動について「文字で読んだり研究者と話して知るのと、現実に目にするのとでは大きく違う。目の当たりにしたとき、心理的な変化が起きる」。
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