中国はかつて世界最高の「先進国」だった自国が、なぜ没落したか思い出すべき
THE LOSE-LOSE WAR
この問題は、中国の約束を守る意思に対する欧米の信頼を低下させた大きな一因だ。それでも、状況を好転させることは可能だ。アメリカは経済力でイギリスを追い越した後、知的財産権の擁護者となったが、中国にも同じことができる。テクノロジー超大国となった今、中国はWTOのルールや確立された世界的規範を守ることに強い関心を持っている。
中国に進出した米企業から最もよく寄せられる苦情の1つは、技術「移転」の強制だ。中国政府にはこの慣行を止めさせる力があり、それによって失われた信頼を取り戻し、将来の協力に向けた基盤を提供することができる。
アメリカに最大の知的財産の移転を行ってきたのは中国
一方アメリカ側は、知的財産の問題に別の見方があることを認識すべきだ。中国人がアメリカで開発する知的財産はアメリカの研究体制ありきだとするアメリカの言い分はもっともだが、中国は中国で、アメリカに最大の知的財産の移転を行ってきたのは自分たちだと反論できる。
アメリカで学びアメリカで働くあまたの中国人の初等・中等教育に投資したのは中国だ。頭脳流出に法的な意味での知的財産は含まれないかもしれないが、これが知的財産の移転であるのは間違いない。
もう1つの亀裂を象徴するのが、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)をめぐる騒動だ。
トランプ政権下でアメリカは、米企業に取引を禁じる外国企業のリストに通信機器大手ファーウェイを加えた。さらに同社の創業者の娘で最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)を対イラン制裁違反の容疑で捜査し、カナダはアメリカの要請に従い彼女を逮捕した。
アメリカはファーウェイを安全保障への脅威と見なし、その5Gネットワーク機器やサービスを「トロイの馬」と警戒する。片や中国はこの件を、中国企業が強大なグローバルプレーヤーになるのを阻止したいアメリカの政治的圧力とみる。
障壁は今後も残るだろう。アメリカは今もファーウェイを排除しており、また検閲法を受け入れないグーグルやフェイスブックなどが中国で事業を許可されるとは考えにくい。
だが一部の分野で協力できないからといって、他分野での協力まで犠牲にする必要はない。両国には気候変動に関して世界トップクラスの研究機関があり、この分野で連携しても安全保障は脅かされない。こうした連携は積極的に促すべきだ。
中国を妨害して割を食うのはアメリカかもしれない。中国の技術セクターをブロックしようとしても成功は見込めず、むしろ裏目に出る可能性さえある。