象のフンが二酸化炭素を減らす──象牙輸出と持続可能な保護活動とは?
THE BREWING BATTLE OVER AFRICA’S IVORY
「需要は高く、それが違法な活動を引き起こしている。象牙の合法的な販売を認めるべきだ。そうすればわれわれが(象牙を)売って市場を飽和させるから、誰も密猟には行かなくなる」とマングワンニャは言う。また象牙を売れば、象牙の保管や警備にかかる年間16万ドルのコストの軽減につながると彼は期待する。
一方でAEC加盟国のケニアは集めた象牙を焼却処分しており、たとえ1度きりの競売であっても、合法的な象牙の国際取引を認めれば密猟の増加につながりかねないと主張している。
ゾウ保護イニシアチブ財団のジョン・スカンロンCEOも、同様の懸念を抱いている。「流通市場ができれば、象牙には高値が付く。密猟を奨励するようなものだ」
2008年にワシントン条約機構は、ボツワナとナミビア、南ア、ジンバブエの南部アフリカ4カ国に対し、象牙を1回に限って輸出することを認めた。
ところが動物保護活動家による研究によれば、この1回きりの輸出の後の09年から13年にかけ、アフリカ諸国における違法象牙の摘発件数は、1カ国当たり年平均で4.8から8.4に増加したという。これ以前の03~07年にかけては、これほどの変動はなかった。
国立公園の警備や密猟の取り締まりに当たるレンジャーや保護活動家からもデータを集めて算出された「違法捕殺されたゾウの割合」指数を見ても、08年以降、不自然な死因で命を落としたゾウの死体の「明らかに不連続的な増加」が見られるという。これは、市場の需要を満たすための密猟のせいだとみられている。
合法的輸出が密猟を増やす?
違法象牙の摘発件数の増加は、06年以降のタンザニアを中心とした密猟の増加を反映している。タンザニアではたった5年間で国内で生息するゾウの約60%が殺された。1回限りとはいえ国際取引が認められたことが、アジアでの需要増に火を付けたと専門家はみている。
南部アフリカの国々は合法的にアジア市場に象牙を売りたいと考えている。もっとも、かつて世界最大の象牙消費国だった中国は17年末に国内の象牙取引を禁止。その一方で日本では象牙は今も盛んに、それも高値で取引されている。
ジンバブエは象牙130トンとサイの角6~7トンを保管している。政府は6億ドル相当の価値があると見積もっているが、この数字については疑問の声も聞かれる。