最新記事

インドネシア

コロナ収束で観光客期待する世界遺跡の入場料値上げ? 地元や国民も猛反対で「朝令暮改」に

2022年6月10日(金)20時45分
大塚智彦
ライトアップされたボロブドゥール遺跡とランタン

ライトアップされたボロブドゥール遺跡 Dwi Oblo - REUTERS

<政府を挙げてインバウンド復活目指すタイミングで4倍もの値上げを発表した意図は?>

インドネシアの世界遺産でもあるジャワ島中部ジャワ州マゲラン県にある世界最大の仏教遺跡「ボロブドゥール」への入場料の値上げを巡って閣僚と現地の州知事そして国会、市民までもが対立。とりあえず値上げ方針は撤回されることになった。

事前の調整、根回しを無視した結果といえインドネシア得意の「朝令暮改」がまた表明化した結果となった。

主要閣僚でジョコ・ウィドド大統領も信頼しているとされるルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資担当)は6月4日に自身のインスタグラムを通じてボロブドゥール遺跡への観光客の入場料値上げを表明した。

それによると現行のインドネシア人5万ルピア(約350円)から75万ルピア(約5200円)の入場料を値上げするとともに、外国人については25ドル(約3250円)から100ドル(約1万3000円)への値上げを発表した。

一方で学生については現行の25000ルピア(約175円)を5000ルピア(約35円)に値下げし、さらに1日の入場者を1200人に制限する方針も示した。

値上げの理由について同調整相は「修復作業のための経費」をあげたものの、なぜ外国人観光客にだけ高額の入場料を課すのかなど具体的説明はなかった。

インドネシアはコロナ感染防止対策が感染者数の減少に伴い段階的に緩和され、現在は外国からの観光客の入国はほぼ自由となっている。このため政府を挙げて観光業の復活を目指して外国からの観光客の訪問を歓迎しているのが現状だ。

そうしたなかで今回発表されたボロブドゥール遺跡の外国人入場料の大幅な値上げは各方面に大きな波紋を与えた。

国会、州知事が値上げ反対を表明

ルフット・パンジャイタン調整相による突然の値上げ方針に対してはまず、地元のガンジャル・プラノウォ中部ジャワ州知事が反対の狼煙を素早く上げた。同遺跡は国の管轄下ではあるが、運営などは州政府、地元自治体が行っている。

ガンジャル州知事は「ボロブドゥール遺跡の事業運営団体などとの協議を経て決めたいので値上げの延期を求める」とルフット・パンジャイタン調整相に要請した。これを受けて同調整相は7日に「値上げ実施を延期し、当面は値上げしない」として当初の方針を変更した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中