ロシア支配マリウポリの集団墓地からコレラ流行の恐れ
Russia Risking Mariupol Cholera Outbreak With Mass Graves, Water Shortage
集団墓地から遺体を掘り起こす作業員(ロシア軍による虐殺があったとされるキーウ郊外のブチャで) Volodymyr Petrov-REUTERS
<ロシア軍との交戦中に集団墓地に埋められた大量の遺体が、インフラが損壊した水源を汚染。すでに数例のコレラが報告されている>
ロシア軍に制圧されたウクライナの都市マリウポリで、埋葬された大量の遺体がコレラのアウトブレイク(感染爆発)を引き起こす可能性があると、地元当局が警告した。
ウクライナ保健省で公衆衛生を統括する医師イーホル・クジンは6月6日の記者会見で、感染すれば死に至る危険がある細菌性疾患、コレラの感染拡大を警告した。市街地周辺での戦闘によって命を落とした人たちの遺体の多くがまとめて埋葬されていることや、上下水道インフラが破壊されたことが、感染拡大の要因になりうるという。「ザ・ニュー・ボイス・オブ・ウクライナ」のニュース・ウェブサイト「NV.UA」が伝えた。
ロシアが主要な港湾都市マリウポリを制圧してから数週間。ウクライナ側の防衛隊は、マリウポリを死守しようと2カ月以上にわたって戦闘を繰り広げたが、最終的にはロシア軍が5月末にこの街を掌握した。戦闘中、地元当局は市内での人道的危機について繰り返し警告を発していた。
危険な飲み水
クジンによると、戦闘で死亡した一部の遺体は、正式な墓地ではない場所に埋葬されており、これが水源の汚染を招いているという。こうした事例が正確にどのくらいあるのか、その数は公表されていない。
ザ・ニュー・ボイス・オブ・ウクライナの報道によると、クジンは住民に対し、コレラの感染拡大を防ぐために、井戸水か水道水を必ず煮沸して用いるようにと呼びかけている。「コレラ流行のリスクはと問われれば、『現実に存在する』ということになる」とクジンは語った。「コレラの感染例が複数、この地域で報告されている。コレラ菌がこれ以上広がらないよう集中して取り組んでいるところだ」
マリウポリ市長の顧問ペトロ・アンドリュシチェンコも6月6日、SNSのテレグラフへの投稿で、同市が感染症のアウトブレイクに備えていると述べた。今のところは個別の症例について報告を受けているにすぎないが、感染拡大は「すでに始まっている」と警告した。
WHO(世界保健機関)も、戦闘中にマリウポリの上下水道が損傷を受け、多くの水道管や下水管が破壊されたことに触れつつ、同市で感染症が拡大する危険性を指摘している。