沖縄、本度復帰50年 対中国の最前線として進む「要塞化」
仲里さんの農場の真横にある駐屯地はかつてゴルフ場だった。中国が海洋進出を強める中で日本政府は南西諸島に次々と基地を建設し、宮古島にも陸自のミサイル部隊を置いた。中国本土に最も近いミサイル拠点であり、沖縄本島と宮古島の間を抜けて西太平洋へ出ようとする中国海軍の艦艇に対するけん制にもなる。
「軍事要塞のようになっていくのが心配だ。小さな島なので、基地があると守られるのではなく戦争を呼び寄せる」と、基地反対を訴える清水早子さん(73)は言う。1995年に島へ移住した元塾講師の清水さんは仲里さんの畑にのぼりを立て、毎週1回、基地の前で抗議を続けている。「声を実際に上げてアクションを起こす人は目に見えては多くない。しかし、これを喜ばない人たちはたくさんいる」と清水さんは語る。
今年3月に赴任した駐屯地司令の伊與田雅一・1等陸佐は、任務を果たすには地元の理解が欠かせないと考えている。島の行事に参加したり、支援をすることで、「交流を図って理解を得る努力を続けていく」と話す。
駐屯地にはおよそ700人の隊員が駐在し、地対艦ミサイル部隊などを配備している。伊與田1佐は「1200キロに及ぶ南西諸島全体の各種事態に迅速に対応する」とし、「現在の体制はまだまだ十分とは言えない」と語る。
軍事拠点増強、次の計画
日本政府は年内に国家安全保障戦略を改定する。防衛費の増額を求める声が高まっていることから、宮古島の体制も強化される可能性がある。
与党・自民党は戦略見直しの一環として、敵の作戦拠点や司令部を叩く長距離弾の導入を要求しているが、琉球大学の我部名誉教授は宮古島に攻撃的な兵器を配備することはないとみる。600キロしか離れていない中国を刺激する恐れがあるためだ。
防衛省の元高官は、宮古島を増強するなら橋でつながった下地島空港の軍用化になる可能性があると指摘する。民間航空会社の操縦士を訓練するために建設された3000メートル級の滑走路を持つ空港で、週末は東京などと結ぶ便が就航している。