沖縄、本度復帰50年 対中国の最前線として進む「要塞化」
宮古島で演習を行う自衛隊員。REUTERS/Issei Kato
仲里成繁(せいはん)さんが営むメロン畑のすぐ横にはフェンスがそびえ、その向こうにミサイル発射装置を備えた車両が並ぶ。2019年3月に陸上自衛隊の駐屯地が配備されて以降、沖縄県宮古島の中央部に広がる静かな農業地帯には、訓練に励む隊員の声が響くようになった。
もし中国と戦争になれば軍事施設は標的になりかねず、仲里さんは国が住民の意志を侵害しているとして今も声を上げて基地に反対している。しかし、島民の中では少数派だと仲里さんは感じている。
「宮古島という小さな生活圏の中で色々なつながりがある」。68歳の仲里さんはビニールハウスの横でそう語った。「子どもや親せきが自衛隊の隊員ということもあり、つながりが狭い。本音では反対と思っていても、声にはなかなか出せないところが難しい」
1972年まで米国の統治下にあった沖縄は、15日に日本本土復帰50年を迎える。第2次世界大戦の激戦地で暮らす人たちは、40年以上農業に携わる仲里さんをはじめ、平和を願い続けてきた。しかし、この半世紀で経済成長を遂げた中国が軍事的にも台頭し、台湾に近い南西諸島は再び戦火に巻き込まれるリスクに直面している。
玉城デニー知事は5月初めに東京の外国特派員協会で会見し、「台湾有事は日本有事と言うような内容の国会議員の発言など、沖縄が武力衝突に巻き込まれることを前提とした議論が行われていることを強く懸念している」と語った。
米国の統治が終わったときに17歳だった琉球大学の我部政明名誉教授は、沖縄がこの先どうなるのか、不安を感じたことを覚えている。それから50年、今も不安を感じているという。「日本と中国の間で戦争や紛争が起こった場合、沖縄は最前線になる」と話す。
戦略的な重要性
サンゴ礁に囲まれ、サトウキビ畑が広がる宮古島は2つの大型空港を有し、軍事的に重要な拠点と考えられている。台湾から400キロ、中国本土の沿岸部から約600キロ。日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)からは200キロしか離れていない。