トルコが北欧2カ国のNATO加盟に反対する理由は「クルド」「戦闘機」
存在感をアピールするトルコのエルドアン大統領 Yves Herman-Pool-REUTERS
<フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対するエルドアンは「ごね得」を狙っている>
フィンランドとスウェーデンは5月18日にNATOに正式に加盟申請した。大半の加盟国は北欧2カ国の仲間入りを歓迎しており、特例的に短期間で承認される見込みだが、そこに待ったをかけたのがトルコだ。
北欧2カ国はトルコを説得しようと、首都アンカラに代表団を送る意向を発表したが、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は「来なくていい」と言い放った。
加盟承認には現在の加盟国30カ国の全会一致の合意が必要だ。トルコがごね続ければ、手続きは遅れる。
エルドアンはしたたかな計算の上でごねているようだ。「ごね得」でできる限り多く見返りを得る気ではないかと、アナリストらはみている。
加盟に反対するトルコの理由は一見するともっともらしい。
トルコ政府は長年、少数民族クルド人の分離独立運動に手を焼いてきた。エルドアンは、北欧2カ国が過激な分離主義組織・クルド労働者党(PKK)と関係がある難民をかくまい、送還を拒否していると主張している。
エルドアンが特に問題にしているのは、彼の政敵で、2016年にトルコを揺るがしたクーデター未遂の首謀者とされるフェトフッラー・ギュレンの支持者たちが多数スウェーデンに逃れていることだ。
しかしトルコの反政府派の亡命先は北欧2カ国に限らない。他のNATO加盟国にも逃れている。ギュレン自身もアメリカに逃れ、今はペンシルベニア州で暮らしている。
仮に北欧2カ国がトルコの反政府派をかくまっているとしても、「それだけでは両国のNATO加盟がトルコの安全保障を脅かすという理由にはならない」と、米外交問題評議会のスティーブン・クック上級研究員は指摘する。エルドアンの主張は論理的に破綻しているというのだ。
強い指導者という神話づくり
トルコは北欧2カ国に矛先を向けているようで、実はアメリカ相手に駄々をこねているのだと、クックはみる。彼に言わせれば、エルドアンを本当にいら立たせているのは「米議会でトルコへのF16戦闘機売却に反対する声が高まっていること」だ。