トルコが北欧2カ国のNATO加盟に反対する理由は「クルド」「戦闘機」
アメリカはトルコがロシア製の地対空ミサイルを購入したことに怒り、最新鋭のステルス戦闘機F35の共同開発計画からトルコを締め出した。
F16戦闘機購入はトルコにとってそれに代わる「残念賞」のようなもの。トルコはロシアとウクライナの停戦交渉を仲介した上、トルコがウクライナに提供したドローンは戦場で大活躍している。エルドアンにすれば、これだけ貢献したのだから残念賞くらいはもらえるはずだ。
ところがバイデン政権にはそう簡単にF16を売却できない事情がある。売却に応じれば、反エルドアンで鳴らすロバート・メネンデス上院外交委員長と対立することになるからだ。「米政府は議会でもめるか、NATOでもめるか厳しい選択を突き付けられている」と、クックはみる。
一方、強い指導者のイメージを国民にアピールしたいエルドアンにとって、北欧2カ国の加盟申請はその絶好のチャンスだった。
米財団ジャーマン・マーシャルファンドのアンカラ事務局を率いるオズギュル・ユンリュヒサルジュクルは、エルドアンも結局は北欧2カ国の加盟を認めるとみている。
ではなぜ異議を唱えたのか。エルドアンにとって、それだけでも欧米に果敢に挑む強い指導者という神話づくりに役立つからだ。
ユンリュヒサルジュクル事務局長によると、国内外の二面的なゲームとすればエルドアンの意図はよく分かる。大統領・議会選挙を来年に控え、今のエルドアンにとっては欧米よりも国民の目が気になるのだ。
2カ国の加盟に難癖をつけて「国際的なイメージは傷ついた? 確かに。だが彼にとってそれは問題か」と、ユンリュヒサルジュクルは問う。
「いや、国民の人気のほうが重要だ」