最新記事

NATO

トルコが北欧2カ国のNATO加盟に反対する理由は「クルド」「戦闘機」

2022年5月24日(火)18時25分
コルム・クイン
エルドアン

存在感をアピールするトルコのエルドアン大統領 Yves Herman-Pool-REUTERS

<フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に反対するエルドアンは「ごね得」を狙っている>

フィンランドとスウェーデンは5月18日にNATOに正式に加盟申請した。大半の加盟国は北欧2カ国の仲間入りを歓迎しており、特例的に短期間で承認される見込みだが、そこに待ったをかけたのがトルコだ。

北欧2カ国はトルコを説得しようと、首都アンカラに代表団を送る意向を発表したが、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は「来なくていい」と言い放った。

加盟承認には現在の加盟国30カ国の全会一致の合意が必要だ。トルコがごね続ければ、手続きは遅れる。

エルドアンはしたたかな計算の上でごねているようだ。「ごね得」でできる限り多く見返りを得る気ではないかと、アナリストらはみている。

加盟に反対するトルコの理由は一見するともっともらしい。

トルコ政府は長年、少数民族クルド人の分離独立運動に手を焼いてきた。エルドアンは、北欧2カ国が過激な分離主義組織・クルド労働者党(PKK)と関係がある難民をかくまい、送還を拒否していると主張している。

エルドアンが特に問題にしているのは、彼の政敵で、2016年にトルコを揺るがしたクーデター未遂の首謀者とされるフェトフッラー・ギュレンの支持者たちが多数スウェーデンに逃れていることだ。

しかしトルコの反政府派の亡命先は北欧2カ国に限らない。他のNATO加盟国にも逃れている。ギュレン自身もアメリカに逃れ、今はペンシルベニア州で暮らしている。

仮に北欧2カ国がトルコの反政府派をかくまっているとしても、「それだけでは両国のNATO加盟がトルコの安全保障を脅かすという理由にはならない」と、米外交問題評議会のスティーブン・クック上級研究員は指摘する。エルドアンの主張は論理的に破綻しているというのだ。

強い指導者という神話づくり

トルコは北欧2カ国に矛先を向けているようで、実はアメリカ相手に駄々をこねているのだと、クックはみる。彼に言わせれば、エルドアンを本当にいら立たせているのは「米議会でトルコへのF16戦闘機売却に反対する声が高まっていること」だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナのNATO加盟、同盟国説得が必須=ゼレン

ワールド

インド中銀がインフレ警戒、物価高騰で需要減退と分析

ワールド

米国、鳥インフルで鶏卵価格高騰 過去最高を更新

ワールド

トランプ氏次男妻、上院議員への転身目指さず ルビオ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中