これからは「俺専用」──飛行機すらサブスク時代の「パーソナライズ」とは?
Trying to Stand Out
ブランドは新たな得意客の獲得とつなぎ留めに躍起になっている PETERSCHREIBER.MEDIA/ISTOCK
<ほかでは味わえない体験と一人一人の顧客に合わせた「パーソナライズ」で、消費者のハートをつかむ>
物もサービスも選択肢は山ほどあるこの時代、消費者に信頼感と愛着を抱かせ、お得意様になってもらうにはどうすればいいのだろう。
ブランドが顧客をつなぎ留めるために提供するものは今や、景品や値引きの類いだけではない。
「消費者に体験を提供するプログラムが目立つようになってきた」と語るのは、ブランドロイヤルティー(信頼、愛着)分野で20年以上の経験を持ち、ホテルチェーンのヒルトン・ホテルズや大手百貨店のニーマン・マーカスのロイヤルティープログラム導入も手掛けてきたハワード・シュナイダーだ。
コンサルティング大手アクセンチュアによると、90%以上の企業が何らかの顧客ロイヤルティープログラムを導入している。
また、アメリカで1つの世帯が利用しているロイヤルティープログラムの数は、平均18件に上るとされる。
そうしたプログラムが売り上げに大きく貢献しているケースもある。スターバックスでは、「スターバックス・リワード」の会員が売り上げの53%を占めている。
これほど多くの企業がロイヤルティープログラムを設けているなかで消費者の注目を引き付け、長くつなぎ留めるには、どうすればいいのか。
「現在は新規の得意客を獲得しやすい状況にある」と語るのは、コンサルティング大手マッキンゼーのパートナー、ジェス・ホアンだ。
「新型コロナのパンデミックの下、消費者の75%がデジタル空間での新しい行動や、新しい購買チャンネル、ブランドを試した。完全に新たなブランドに乗り換えた人も40%いた」
顧客ロイヤルティープログラムの成功のカギを握る要素として、シュナイダーとホアンがそろって挙げるものが2つある。それは、ほかでは味わえない体験と、一人一人の顧客に合わせたパーソナライズだ。
「単に商品購入の対価として特典を提供するのではなく、ほかのブランドと一味違うものを提供すべきだ」と、シュナイダーは言う。
大手銀行シティバンクのプログラムでは、クレジットカード利用者にポイントやキャッシュバックだけでなく、コンサートのバックステージを見学したり、スポーツイベントを最前列で観戦したりする機会を提供している。
化粧品小売りチェーン、セフォラの「ビューティー・インサイダー」では、会員が新製品をいち早く試したり、化粧品ブランドの創業者と一対一で面会したり、会員限定ギフトを受け取ったりできる。