最新記事

ブランド

これからは「俺専用」──飛行機すらサブスク時代の「パーソナライズ」とは?

Trying to Stand Out

2022年4月25日(月)17時05分
メーガン・ガン
顧客

ブランドは新たな得意客の獲得とつなぎ留めに躍起になっている PETERSCHREIBER.MEDIA/ISTOCK

<ほかでは味わえない体験と一人一人の顧客に合わせた「パーソナライズ」で、消費者のハートをつかむ>

物もサービスも選択肢は山ほどあるこの時代、消費者に信頼感と愛着を抱かせ、お得意様になってもらうにはどうすればいいのだろう。

ブランドが顧客をつなぎ留めるために提供するものは今や、景品や値引きの類いだけではない。

「消費者に体験を提供するプログラムが目立つようになってきた」と語るのは、ブランドロイヤルティー(信頼、愛着)分野で20年以上の経験を持ち、ホテルチェーンのヒルトン・ホテルズや大手百貨店のニーマン・マーカスのロイヤルティープログラム導入も手掛けてきたハワード・シュナイダーだ。

コンサルティング大手アクセンチュアによると、90%以上の企業が何らかの顧客ロイヤルティープログラムを導入している。

また、アメリカで1つの世帯が利用しているロイヤルティープログラムの数は、平均18件に上るとされる。

そうしたプログラムが売り上げに大きく貢献しているケースもある。スターバックスでは、「スターバックス・リワード」の会員が売り上げの53%を占めている。

これほど多くの企業がロイヤルティープログラムを設けているなかで消費者の注目を引き付け、長くつなぎ留めるには、どうすればいいのか。

「現在は新規の得意客を獲得しやすい状況にある」と語るのは、コンサルティング大手マッキンゼーのパートナー、ジェス・ホアンだ。

「新型コロナのパンデミックの下、消費者の75%がデジタル空間での新しい行動や、新しい購買チャンネル、ブランドを試した。完全に新たなブランドに乗り換えた人も40%いた」

顧客ロイヤルティープログラムの成功のカギを握る要素として、シュナイダーとホアンがそろって挙げるものが2つある。それは、ほかでは味わえない体験と、一人一人の顧客に合わせたパーソナライズだ。

「単に商品購入の対価として特典を提供するのではなく、ほかのブランドと一味違うものを提供すべきだ」と、シュナイダーは言う。

大手銀行シティバンクのプログラムでは、クレジットカード利用者にポイントやキャッシュバックだけでなく、コンサートのバックステージを見学したり、スポーツイベントを最前列で観戦したりする機会を提供している。

化粧品小売りチェーン、セフォラの「ビューティー・インサイダー」では、会員が新製品をいち早く試したり、化粧品ブランドの創業者と一対一で面会したり、会員限定ギフトを受け取ったりできる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米・インド高官、二国間貿易協定へ前進 相互関税発表

ワールド

米ロ、レアアース開発巡りロシアで協議開始=ロシア特

ビジネス

相互関税、全ての国が対象に=トランプ米大統領

ワールド

デンマーク首相がグリーンランド訪問へ、新政権と協力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中