習近平はなぜ国民の怒り買う「ゼロコロナ」政策にこだわり続けるのか
国民の怒りが高まり、景気見通しが急激に悪化した場合、多くの国家指導者ならば事態を憂慮して政策を見直すだろう。写真は2020年12月、中国・武漢の会議場で開催されたコロナ対策の展覧会で、スクリーンに映し出された習近平・
国民の怒りが高まり、景気見通しが急激に悪化した場合、多くの国家指導者ならば事態を憂慮して政策を見直すだろう。
しかし、政権3期目にスムーズに移行したいはずの習近平・中国国家主席は今、新型コロナウイルス変異株オミクロンとの闘いで試練にさらされている「ダイナミックゼロコロナ」政策をさらに強めようとしている。
習氏は先週、国営メディアを引き連れて南部の海南島を訪れた際、この政策の重要性を繰り返し強調した。アナリストによると、習氏は今年強い姿を見せる必要があり、方向転換して弱さを見せることは政治的に厳禁だ。海南島での行動にはそうした背景があるという。
習氏の姿勢はまた、集団免疫もなく医療制度が貧弱な中国において、ゼロコロナ政策に代わる魅力的な選択肢が存在しないことも示している。
中国政府がこれまで新型コロナの危険性を非常に重大視してきたという事情もある。今さら方向転換すれば、新型コロナに恐怖心を抱くよう慣らされてきた国民に対して反対のメッセージを送ることになり、格好がつかない。
ナティクシスのアジア太平洋首席エコノミスト、アリシア・ガルシアヘレロ氏は「西側が見つけた回答を輸入するのではなく、ショックに対する中国独自の回答を固守したい、というのが彼の考え方だろう」と話す。「集団免疫を目指す西側のアプローチに対抗する『ダイナミックゼロコロナ』政策がそのひとつだ」という。
習近平政権下では最大規模の国民の怒り
国民の怒りが広がっているにも関わらず、習氏がゼロコロナ政策に固執するのは、政権内部に反対勢力がおらず自身の立場が確保されているという自信の現れでもある。今年秋に開かれる5年に一度の中国共産党大会で、習氏は前代未聞の3期目へと向かう。
北京大学の政治科学講師、ヤン・チャオフイ氏は「さまざまなバックグラウンドを持つ多くの人々が声を上げていることと、その表現の強さを考えると、これは習氏が政権を握った2012年以来で最も大規模な国民の怒りの表明だ」と話す。
しかし「国民の不満の声はばらばらで、習氏に影響を及ぼせるほどの勢いには至っていない」
中国のゼロコロナ政策は、症状の有無にかかわらず感染者全員に隔離を義務付けるもので、長く国民の支持を得てきた。しかし今、上海その他の地域で住民や企業がしびれを切らし、恩恵よりも代償の方が大きいとして反発し始めている。大半の感染者が無症状なだけに、不満はなおさら大きい。