ウクライナ侵攻「明日はわが身」の台湾人が準備しているもの
WATCHING UKRAINE, TAIWAN WARY
アメリカ製の兵器の供給拡大をめぐる疑問もある。背景にあるのは、ウクライナ侵攻を受けて、アメリカとポーランドの間で持ち上がった議論だ。
保有する旧ソ連製ミグ29戦闘機全機をウクライナに供与するため、米軍に引き渡すと申し出たポーランドは、代わりとしてF16戦闘機の提供を要請。だがF16の供給数には限りがあり、その大半は台湾に納入される予定になっている。
台湾の戦闘準備や武器購入の有効性をめぐる見方は結局のところ、簡単には変わらないかもしれない。
台湾では3月14日、空軍のミラージュ2000戦闘機が訓練中に墜落した。一昨年以来、7回目の戦闘機墜落事故だ。
この手の事故が増えているのは、中国による頻繁なADIZ(防空識別圏)侵犯の負担のせいと考えられるが、台湾軍への信頼を育む出来事とは言い難い。
3月3日には、台湾の広い範囲で停電が発生した。原因は南部の高雄市にある興達石炭火力発電所の設備故障で、サイバー攻撃の可能性が懸念された(実際には事故だった)。
ウクライナ危機のさなか、中国はADIZ侵犯など、台湾への威嚇を続けている。
3月2日には台湾本島の南東沖に位置する島、蘭嶼の沖合で中国の軍艦3隻が目撃された。中国海軍の艦艇がこれほど台湾に接近したのは、近年では初めてのことだ。
果たして、その狙いは......。
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