ウクライナ侵攻「明日はわが身」の台湾人が準備しているもの
WATCHING UKRAINE, TAIWAN WARY
台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統率いる政権は既に、予備役の1回の訓練日数を従来の約2倍に当たる14日間に延長し、3月上旬から新制度の下で訓練を開始。特に国際的メディアを意識して、準備態勢をアピールしている。
台湾では2018年12月に徴兵制が事実上廃止されたものの、18~36歳の男性は4カ月間の軍事訓練の義務を課されている。
かつての兵役義務と同じく、軍事訓練期間を1年間に延長する動きに、多くの政党はこれまで消極的だった。
蔡政権は軍事訓練義務の延長を検討し始めているが、兵役に対する若者の抵抗感は周知の事実だ。下手に踏み切れば、支持率をリスクにさらしかねない。
いずれにしても、民進党は今や、防衛費拡大に向けてより大きなチャンスを手にしているのではないか。これは、台湾に対するアメリカの長年の要求にかなう行動だ。
中国が侵攻してきた場合、外国が介入するまで何週間も自衛を迫られるかもしれない。ロシアのウクライナ侵攻で、そうした意識に目覚めた台湾では「自助・自立」への動きが加速する可能性がある。
民進党の若手政治家で、元台湾軍特殊部隊員の呉怡農(ウー・イーノン)が率いるシンクタンク、壮闊台湾連盟は有事に備えて訓練を受けるよう呼び掛けている。こうした姿勢は全社会的な現象とは程遠いものの、民進党を中心とする緑色陣営で勢いを増しているようだ。
ウクライナは、軍事力がはるかに上の相手に対する「非対称戦争」戦略の成功例だとの考えの下、同様の戦略に比重を置くことも予想される。
米国製兵器をめぐる疑問も
とはいえ、誇示を主目的とする高額の兵器を購入するのか、それとも台湾防衛に役割を果たせる実用的な武器を買うのか。
非対称戦争路線には、緑色陣営と国民党中心の青色陣営の泥沼の論争が待ち受けていそうだ。しかも、台湾が購入可能な武器についてはアメリカに発言力があるため、蔡政権が一存で答えを出せるわけではない。
ウクライナ侵攻の教訓として、中国は敵の指導部を除去する「斬首作戦」や短期決戦により力を入れる可能性が高い。
従って、戦時における政治指導者の早期排除を回避する防衛手段を入手することに、台湾は関心を高めるだろう。
青色陣営はこの数年、アメリカは台湾に武器を売却したいだけではないかとの疑念をかき立てようとしてきた。同陣営に属する政治家は、アメリカは時代遅れの使えない品を売り付けているとも批判している。