ウクライナ侵攻受け欧州でNATO拡大機運 「安全保障上のロシアの脅威」現実に
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今年3月、ノルウェー北部の沿岸に銃声と砲声が響き渡った。写真は3月25日、フィンランドとスウェーデン両軍が参加し、ノルウェー北部セテルモエンで行われたNATO合同演習の一環で、軍用車両を操縦するスウェーデン軍兵(2022年 ロイター/Yves Herman)
今年3月、ノルウェー北部の沿岸に銃声と砲声が響き渡った。フィンランドとスウェーデン両軍が初めて連合部隊を編成、北大西洋条約機構(NATO)と合同演習を実施した。
両国ともNATOには加盟していない。演習はずっと前から決まっていたが、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした欧州の緊迫感の高まりを象徴する形になった。
スウェーデン軍の将校はロイターに「脅威が存在すると認識していないなら、あまりにもおめでたい。欧州全域の安全保障環境は一変しており、われわれはそれを受け入れ、適応しなければならない」と語った。
ロシアのプーチン大統領はNATOの東方拡大を阻止する意味もあってウクライナに侵攻した。しかし、それがかえって北欧諸国の間に警戒感を引き起こし、近いうちにロシアの近隣国がNATOに新規加盟する皮肉な展開につながるかもしれない。
フィンランドはロシアと国境を接し、その距離は1300キロに及ぶ。同国のニーニスト大統領は3月28日、フェイスブックへの投稿で、NATOのストルテンベルグ事務総長に新規加盟受け入れの諸原則と手続きの詳細を問い合わせたことを明らかにした。
また、ハービスト外相はロイターに対し、NATOに加盟する30カ国の「ほぼ全て」と新規加盟の可能性を議論したとし、4月半ばまでに議会へ必要事項を提出すると述べた。
中立を掲げ、1814年以来戦争をしていないスウェーデンはもう少し慎重だ。それでも地元テレビ局が最近行った世論調査では、フィンランドが加盟するならスウェーデンもNATOに入りたいとの意見が59%に達した。
NATO加盟国の一部は、既にフィンランドとスウェーデンをパートナーとみなしている。米海兵隊のバーガー司令官は演習中、記者団に対して、正式加盟に絡む政治問題を別にすれば、両国は訓練を通して「戦友」になったと言い切った。
ストルテンベルグ氏は3月上旬、NATOはウクライナで起きている戦争に関してフィンランド、スウェーデン両国とあらゆる情報を共有していると発言。両国は定期的にNATOの会合にも出席しており、ストルテンベルグ氏は演習中、世界で両国ほど近しいパートナーはいないと話した。
ただ、ストルテンベルグ氏は「われわれが加盟国に提供する絶対的な安全保障は当然加盟国にしか適用されない」と述べ、非加盟の両国が置かれた重要な立場の違いを指摘した。つまり両国は、どの加盟国への攻撃もNATO全体への攻撃として対応する集団安全保障の網の目には入っていない。