ロシア、デジタル版「鉄のカーテン」で西側SNS遮断 市民は抜け道経由で信頼できる情報にアクセス
グローバルなVPN運営企業に対してロシア向けに無料アクセスを提供するよう求める請願は、約3万5千筆の署名を集めた。
人権活動家は、暗号化されていない通信は、特に独立系のロシア人ジャーナリストや、侵攻を批判する人々にとって、逮捕や脅迫につながると指摘している。
そこで、メッセージの自動削除を設定する、あるいは定期的にメッセージやボイスメモを削除している人もいる。
もっとも、モナッシュ大学先端技術研究所のジェイサン・サドウスキー上級研究員によれば、VPNその他の迂回(うかい)ツールを使っても完全にファイアウォールを無効化することはできないし、常に信頼できるわけでもないという。
「こうしたサービスの効果はまちまちだし、かなり不安定になる場合もある。つまり、インターネットの制限にはやはり効果がある」と、サドウスキー氏はトムソン・ロイター財団に語った。
ロシアの動きによって、相互に接続できない、あるいは互換性のないテクノロジーを用いる国内・地域内のネットワークが多数存在する状態、いわゆる「スプリンターネット」が生じる懸念が高まっている。だがサドウスキー氏によれば、ロシアはすでに起こりつつあった変化を加速しているだけだという。
「この動きは、以前から『インターネットのバルカン化』とも呼ばれているが、インターネットのデジタル構造と物理的インフラの形成という点で、地政学がいかに重要な要因になっているかを露呈している」とサドウスキー氏。
「『スプリンターネット』はすでに多くの形で存在している。それをどのように経験するかは誰がどこにいるかによって変わってくるが」
規制回避のさまざまな手段
世界各国の政府はテクノロジー企業の統制を試みており、数多くの規制やファイアウォール、インターネット封鎖、ソーシャルメディアへの接続遮断によって、ニュースの流れに制限を設けようとしている。
中国やイラン、ロシアは長年にわたり、当局の統制能力を強める方向で民間の分散化されたネットワークに介入してきた。
エチオピア、ベネズエラ、イラク、インド、ミャンマーなどでは、ソーシャルメディアの遮断・機能停止が日常茶飯事であり、カンボジアは中国のような国家規模のゲートウェイ導入を予定している。
BBCや、ドイチェ・ヴェレなどグローバル規模の報道機関は、ロシア国民向けに、「トーア(Tor)」を使ってブロックされたウェブサイトにアクセスする方法を紹介するガイドラインを公表した。「トーア」は、複数のサーバーによるネットワークを経由することで接続経路を匿名化するソフトウエアである。