最新記事

スターリンク

ウクライナ軍が衛星インターネット「スターリンク」を無人偵察機やドローン攻撃で活用

2022年3月30日(水)17時15分
松岡由希子

スターリンクにアクセスするウクライナ軍 YouTube

<ウクライナの無人偵察機や無人攻撃機にイーロン・マスクの衛星インターネット・サービス「スターリンク」が使用されている......>

アメリカの実業家イーロン・マスクが率いるスペースXは、2000基以上の小型通信衛星を高度547.25キロメートルの地球低軌道(LEO)に送り込んで衛星コンスタレーション(多数個の人工衛星からなるシステム)を形成し、次世代型衛星インターネットサービス「スターリンク」を運用している。

地球低軌道を周回しながら協調動作する多数の小型通信衛星と地上の設置した専用の送受信機が通信する仕組みだ。一般的な通信衛星に比べて低軌道を周回するため低レイテンシ(通信の遅延時間)で、軍用にも耐えうるとされる。

要請から10時間後にウクライナで「スターリンク」開始

ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を受けて、ウクライナのミハイロ・フォードロフ副首相兼デジタル転換相は2月26日、ツイッターを通じてマスク氏に「スターリンク」の提供を要請。


マスク氏はわずか10時間後に「ウクライナで『スターリンク』のサービスを開始した」と応じた


3月1日以降、5000台以上の送受信機がウクライナへ届けられ、安定的な通信環境が実現されている。


無人偵察機や無人攻撃機に「スターリンク」が使用されている

英紙「デイリー・テレグラフ」によると、空中偵察やドローン戦に特化したウクライナ陸軍の部隊「アエロロズヴィドカ」でも無人偵察機や無人攻撃機に「スターリンク」が使用されているという。

インフラが脆弱で、インターネットに接続できない地域でも、「スターリンク」を通じて戦場データベース上の標的やインテリジェンスにアクセスでき、ドローンに直接、対戦車弾の投下を指示することも可能だ。

The Ukrainian Army is connecting to Elon Musk's Starlink satellite.


スターリンクでドローン部隊と砲兵隊をつないでいる

「アエロロズヴィドカ」の将校は、英紙「タイムズ」の取材に「『スターリンク』を用いてドローン部隊と砲兵隊をつないでいる」と明かしている。

「タイムズ」によると「アエロロズヴィドカ」は1日約300の情報収集ミッションを遂行。これをもとに、攻撃は夜間に行われている。サーマルカメラが搭載されたドローンは暗闇ではほとんど見えないからだ。

「スターリンク」はウクライナの人々が情報にアクセスする手段としても大いに活用されている。ウクライナでは3月17日時点で「スターリンク」のスマートフォンアプリが累計29万5000回以上ダウンロードされた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダの大学、米国からの入学申請急増 トランプ氏の

ビジネス

トランプ米政権、石炭発電所47カ所を環境規制から免

ワールド

ブラジル、28年の政府債務はGDP比で84.2%に

ビジネス

バイデン氏、退任後初の演説 「損害と破壊」とトラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中