ウクライナ軍が衛星インターネット「スターリンク」を無人偵察機やドローン攻撃で活用
スターリンクにアクセスするウクライナ軍 YouTube
<ウクライナの無人偵察機や無人攻撃機にイーロン・マスクの衛星インターネット・サービス「スターリンク」が使用されている......>
アメリカの実業家イーロン・マスクが率いるスペースXは、2000基以上の小型通信衛星を高度547.25キロメートルの地球低軌道(LEO)に送り込んで衛星コンスタレーション(多数個の人工衛星からなるシステム)を形成し、次世代型衛星インターネットサービス「スターリンク」を運用している。
地球低軌道を周回しながら協調動作する多数の小型通信衛星と地上の設置した専用の送受信機が通信する仕組みだ。一般的な通信衛星に比べて低軌道を周回するため低レイテンシ(通信の遅延時間)で、軍用にも耐えうるとされる。
要請から10時間後にウクライナで「スターリンク」開始
ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を受けて、ウクライナのミハイロ・フォードロフ副首相兼デジタル転換相は2月26日、ツイッターを通じてマスク氏に「スターリンク」の提供を要請。
@elonmusk, while you try to colonize Mars -- Russia try to occupy Ukraine! While your rockets successfully land from space -- Russian rockets attack Ukrainian civil people! We ask you to provide Ukraine with Starlink stations and to address sane Russians to stand.
— Mykhailo Fedorov (@FedorovMykhailo) February 26, 2022
マスク氏はわずか10時間後に「ウクライナで『スターリンク』のサービスを開始した」と応じた。
Starlink service is now active in Ukraine. More terminals en route.
— Elon Musk (@elonmusk) February 26, 2022
3月1日以降、5000台以上の送受信機がウクライナへ届けられ、安定的な通信環境が実現されている。
Starlink -- here. Thanks, @elonmusk pic.twitter.com/dZbaYqWYCf
— Mykhailo Fedorov (@FedorovMykhailo) February 28, 2022
無人偵察機や無人攻撃機に「スターリンク」が使用されている
英紙「デイリー・テレグラフ」によると、空中偵察やドローン戦に特化したウクライナ陸軍の部隊「アエロロズヴィドカ」でも無人偵察機や無人攻撃機に「スターリンク」が使用されているという。
インフラが脆弱で、インターネットに接続できない地域でも、「スターリンク」を通じて戦場データベース上の標的やインテリジェンスにアクセスでき、ドローンに直接、対戦車弾の投下を指示することも可能だ。
The Ukrainian Army is connecting to Elon Musk's Starlink satellite.
スターリンクでドローン部隊と砲兵隊をつないでいる
「アエロロズヴィドカ」の将校は、英紙「タイムズ」の取材に「『スターリンク』を用いてドローン部隊と砲兵隊をつないでいる」と明かしている。
「タイムズ」によると「アエロロズヴィドカ」は1日約300の情報収集ミッションを遂行。これをもとに、攻撃は夜間に行われている。サーマルカメラが搭載されたドローンは暗闇ではほとんど見えないからだ。
「スターリンク」はウクライナの人々が情報にアクセスする手段としても大いに活用されている。ウクライナでは3月17日時点で「スターリンク」のスマートフォンアプリが累計29万5000回以上ダウンロードされた。