韓国「尹錫悦」新大統領、「日米との関係強化」「脱中国」路線の危うさ
Balancing China and the US
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親米反中路線を掲げる尹だが有言実行には経済的事情が立ちはだかる KIM HONG-JIーPOOLーREUTERS
<5月に第20代大統領に就任する尹錫悦は、民主主義陣営との協調と中国依存からの脱却を目指すが、経済成長を実現しながら有言実行する余力はあるのか>
親米反中路線を掲げ、3月9日の韓国大統領選を制して次期大統領の座を射止めた保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長。しかし尹の外交政策は、言うは易く行うは難し。韓国にとって中国離れは容易ではないだろう。
大統領選で、尹と与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事との差はわずかに0.73ポイントと大接戦ではあったが、韓国において選挙で最も重視されるのは常に国内問題。たとえ国際問題が何らかの影響を及ぼしたとしても国内問題最優先に変わりはなく、それは今回の大統領選とて同じだ。
一方で、中国やアメリカとの関係は将来的には韓国の政治と経済の多くを決定付けるものでもある。つまり、新大統領が対中・対米関係をどう変えるつもりかを理解することは極めて重要になってくる。
尹はこれまで、大統領になった暁には民主主義国、特にアメリカとの協調関係を促進し、中国に代表されるような独裁政治や反自由主義的な秩序の出現に立ち向かうと明言してきた。頼もしい姿勢ではあるが、中国が韓国の輸出の27%を占める最大の貿易相手国であること、また持続的な経済成長による国内状況の安定が条件であることを考えれば、有言実行は簡単ではない。
ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー供給へのマイナス影響と世界的な食糧価格高騰を引き起こしており、国内の家計を直撃すると同時に経済成長の足かせとなっている。これにより、尹新政権が政策を実現する余地はさらに狭められることになるだろう。
韓米協調に本腰を入れる見通し
尹の当選は、米韓関係と自由主義陣営にとって確かに良いニュースではある。尹はさまざまな領域でアメリカとの関係を強化する意向を示しており、それは軍事同盟や二国間貿易にとどまらず、米バイデン政権が中国を孤立させる目的で提唱している「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」と民主主義陣営への支持にまで及んでいる。
新政権がアメリカとの同盟を犠牲にしてまで中国に取り入ったり、同盟関係にただ乗りしたりすることは考えにくい。むしろ新政権は韓米協調に本腰を入れ、軍事力を強化し、インド太平洋のような国際的領域にさらに関与していくとみられている。
尹は、現・文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮と対話を引き出すために小規模化してきた韓米軍事演習を正常化する用意もあるようだ。